海外版DVDを見てみた 第37回 ヤン・トロエルを見てみた(上) Text by 吉田広明
ヤン・トロエル
ヤン・トロエルという映画作家を知ったのは恥ずかしながらごく最近、アメリカのクライテリオンからその主要監督作が続々デジタル・リマスターDVD化されているのに気づいてのことだ。クライテリオンで、しかも一作程度ならともかく、これだけ続くということは世界映画史的に重要な作家なのだろうか、それを知らなかったわけなのかと焦りもしたのであった。クライテリオンのホームページや、IMDb(インターネット・ムーヴィー・データベース)などでざっと見ると、少年のビルドゥングス・ロマン(『これが君の人生』)だったり、移民たちの物語(『移民者たち』、『新天地』)だったり、いずれにせよ叙事的な作品で、しかもそのどれもが三時間を超える長尺作品、かつ、その全てにおいて監督自身が脚本、撮影、編集も務めている。この時点で同様に脚本、撮影、編集を兼ねた長尺の作品『木靴の樹』の監督エルマンノ・オルミを連想したのであったが、しかしオルミの作品は比較的短いものが実は多く、三時間を超えるのは『木靴の樹』のみであり、基本的に長いトロエルとはヴォリュームが異なるばかりでなく、おいおい記述してゆくように実際に見てみるとその資質においても異質である。

それはともかく、調べてみると既に2014年に北欧映画の紹介窓口であるトーキョーノーザンライツフェスティバルで『マリア・ラーション 永遠の瞬間』が上映されており、またアメリカで撮った西部劇(と言っていいのか)『西部に来た花嫁』もBSで放映されていたようであるが、これも勉強不足で知らなかった。今回筆者が見たのはクライテリオンから出た『これが君の人生』、『移民者たち』、『新天地』、『マリア・ラーション 永遠の瞬間』と、ワーナー・アーカイヴスの『西部に来た花嫁』の五本。これらについて書く。