海外版DVDを見てみた 第23回 ヒューゴ・フレゴネーズのアメリカ時代 Text by 吉田広明
その後のフレゴネーズ
フレゴネーズは、『死刑五分前』を最後に、ハリウッドを離れる。ざっと作歴を記述すると、イタリアで既述のI Girovaghiと、冒険ものLa Spada imbattibile(57)、イギリスで、ナチス占領下の南仏を舞台に(ただし撮影はすべてイギリス)、イギリスのレジスタンスとフランス娘の恋を描いた『七つの雷鳴/マルセーユ死の突破』(57)、人食い虎と人間の対決を描く『不敵な爪』(58、これもシドニー・ボームの脚本)。再びイタリアで冒険もの大作『マルコ・ポーロの冒険』(62、ピエロ・ピエロッティと共同監督)、ドイツで、西部劇『騎兵隊最後の砦』(64、これはドイツでは有名な西部小説Old Shatterhandの映画化)、フリッツ・ラングのマブゼ・シリーズの一作『怪人マブゼ博士・殺人光線』(63、ヴィクトール・ド・サンティスと共同監督)。アルゼンチンに帰り、アルゼンチンを舞台にした西部劇Savage Pampas(66)、未クレジットだが、ホラー『モンスター・パニック/怪奇作戦』(70)。生涯最後の二作品、La mala vida(73)は、1920年代に実際にあった、マフィアの売春組織と、政治腐敗を描いた緊迫感のあるスリラーであり、Mas alla del sol(75)は、アルゼンチンの航空業のパイオニアの生涯を描いた作品という。

最後の二作品は彼の名を貶める作品ではなかったようだが、イタリアでのI Girovaghiを除いては、撮ることが名誉にはならない作品ばかりだったように見える(実際に見ないと確かな判断はできないが)。アメリカにおいても、見てそれと分かる視覚的な個性を持っていた監督と言いうるかどうか。ハリウッドのスタジオの崩壊によって、ヨーロッパに向かわざるを得なかったのは、同時代の作家たち(1906年生まれのアンソニー・マン、1911年生まれのニコラス・レイ、フレゴネーズは1908年生まれ)も同様にせよ、どこであれしぶとく生き残ってゆくだけの技量がやはり足りなかったことが、彼らより貧弱な作歴となって表れているように思う。しかし考えようによっては、優れた技量を持っていたからこそ、それに自信のあったマンやレイが、思ったような映画が撮れない状況は一層悲劇的であり、彼らがろくな余生を持たなかったことに比べれば、アルゼンチンで、兄が拓いたリゾート地に隠棲したというフレゴネーズは、よほど幸せだったのかもしれない。



Apache drumsはフランスのSydonis CalystaからQuand les tambours s’arrêterontという題で、Untamed frontierはスペインのSuevia FilmsからDenbow, frontera indomableという題でDVDが出ている。ともにリージョン2、pal版。Man in the atticはVCIentertainmentから、Blowing windはOlive filmsから、The Raidは20th Fox cinema archivesからDVDが出ている。Blowing windのみリージョン1。