『十代の足どり』
㉒『警視庁物語 十代の足どり』(1963年7月7日公開)58分
[監督]佐藤肇 [脚本]長谷川公之 [撮影]仲沢半次郎
[事件名]多摩川原少女殺人事件 [事件発生場所]多摩川土手 [その他の主要なロケ地] 二子玉川、上野毛、世田谷区玉川(東急スポーツガーデン)、新宿2丁目(ストリップ劇場「ニュー内外ミュージックホール」)、渋谷(リキボーリング)
多摩川堤で十代の娘の他殺死体が発見される。さっそく警視庁捜査第一課が出動し、現場に残されていたラバーソールの靴の足型をとる。娘が行方不明だという夫人の訴えで、殺されたのは松本みどりという16歳の女子高校生であることが判明する。交友関係から捜査線上に浮かんできたのは、みどりのボーイフレンドで木元という名の大学拳闘部員と宮崎という名の浪人生だった。宮崎には親友・原田のアリバイがあったが、靴底から割り出した身長180センチは宮崎にぴったりだった……。
シリーズ第22話は佐藤肇による2本撮りの1本で、若者の風俗に焦点を当てた一作。本シリーズでは川の系譜に位置する作品。佐藤によれば、長谷川公之の脚本を一読した佐藤は、これがジョン・B・マーチンの「悪魔の1ダースは13だ」 (東京創元社、1960年)にある短篇がベースになっていることを指摘して、それを否定する長谷川との間でちょっと気まずい空気が流れたという。ただし本当に長谷川が翻訳小説からヒントを得たかどうかの真偽は定かではない。
事件の背景に若者の風俗や性があるということで、若者の遊ぶ娯楽施設、ポルノ映画の看板やストリップ劇場など街に氾濫する性風俗、バイクに乗って奇声をあげて疾走する若者の姿、旅館の一室に集まった若い男女がタバコを吸いながら花札に興じるなど、この時代の当世若者白書といった風俗が次々と描かれる。映画の2年前にできたばかりの力道山が経営するリキ・スポーツパレスも映画に登場し、劇中では若者言葉が飛び交う。
佐藤のドラマ志向は、前作『ウラ付け捜査』よりさらに強く前面に押し出され、カットを細かく割って見せたり、逆に固定ショットで1ロールそのまま長回しで撮ったり、さらにドリーショットやズームも多用。同ポジションからトラックアップしながらのジャップカットの使用はまだ斬新だったのではないだろうか。さらに堀雄二が被害者の姉(新井茂子)に妊娠が想像妊娠だったと告げる場面では途中で堀の言葉を消して劇伴だけにしてみたり(ショックを受ける新井の主観)、テクニックのオンパレードで、これはもはやセミドキュではなく、劇映画そのものである。