『七人の追跡者』
⑦『警視庁物語 七人の追跡者』(1958年6月10日公開)57分
[監督]村山新治 [脚本]長谷川公之 [撮影]佐藤三郎 [助監督]島津昇一
[事件名] マンホール死体遺棄事件 [事件発生場所]世田谷区玉川 [その他の主要なロケ地]東急バス中之川橋(?)、目黒(銀行・宝石商)、世田谷区上馬(ガソリンスタンド)、新橋(バー「チェリー」)、大森、赤羽、渋谷東急前
マンホールから女の扼殺死体が発見された。情事か物盗りか警視庁捜査陣はただちに捜査を開始した。そこにマネキン人形製造会社から失踪者の問い合わせがあり、被害者の身元が判明する。被害者は同社の事務員で、26歳の子持ちの未亡人で会社の給料を銀行から受取りに行ったまま、行方不明になっていた。聞き込みの結果、会社の同僚は被害者がオパールの指輪をしていたというが、銀行の事務員は金を引出しに来た時は、ヒスイの指輪をしていたという……。
マンホールから女性の死体が発見されるというショッキングなオープニングは、この頃起きた実際の事件に取材したもの。会社の事務員がカネを持ち逃げして、殺人事件に巻き込まれるというプロットは、『サイコ』(1960年、アルフレッド・ヒッチコック監督)に先立つ。
事件が起きてすぐ捜査一課の事務所に傷ついた小鳥が飛び込んでくる。捜査の進行に合わせて、神田隆演じる捜査主任が鳥籠の中の小鳥の様子を覗きこむ姿が挿入される。そして最後に事件が解決したときに、小鳥の傷も癒え、主任は窓から小鳥を逃がしてやるという小味な要素が盛り込んである。
隠し撮りで撮影された、終盤の渋谷東急前の現金の受け渡し場面は、前年の『危険な英雄』(1957年、鈴木英夫監督)のクライマックスでも同じロケーションで同様の場面が撮影されていたので、比較してみるのも一興かもしれない。大村文武が前作『夜の野獣』のチンピラ役から刑事に昇格。