『魔の最終列車』
②『警視庁物語 魔の最終列車』(1956年3月8日公開)60分
[監督]小沢茂弘 [脚本]長谷川公之 [撮影]福島宏 [助監督]チーフ:島津昇一 セカンド:飯塚増一
[事件名]郵便列車強盗殺人事件 [事件発生場所]品川 [その他の主要なロケ地] 東京駅、赤羽、日暮里、銀座、中央線沿線(林の中)、外苑
走行中の郵便列車が何者かに襲われた。職員たちは拳銃で撃たれ、現金の入った袋が盗まれる。警視庁機動捜査陣が駆けつけ、現場を調べると、薬莢4発、弾痕4つ、被害者摘出の弾が1つ。被害者一人の傷が軽いので狂言も疑われた。銃器解析の結果、拳銃はスペイン製のゲルニカと分かった……。
前作『逃亡五分前』と2本撮りで撮影されたシリーズ第2作。発端の郵便列車襲撃は、
「Jフィルム・ノワール覚書⑥ 新東宝の衛星プロと日米映画」でも紹介した、『殺人列車301号』(原案=長谷川公之、監督・脚本=船橋比呂志)のモトネタになった1949年に実際に起きた事件をヒントにしたもの。
本シリーズを始めるにあたって、捜査側の一元描写で物語を進めたいと主張する斎藤安代(プロデューサー)と長谷川公之(脚本家)は、それを危ぶむ東映上層部を納得させるため、『逃亡五分前』は一元描写で通し、もう1本の本作は捜査する方と犯人側の描写を交錯させることにした。内容もそれに合わせて、犯人はギャング団という設定で、身元が割れた後半部分になると、カットバックによる二元描写になる。それだけではなく、捜査陣とギャングたちのカーチェイスや派手な撃ち合いがあり、ギャングのボスが山形勲というキャスティングのせいもあって、平凡な活劇になってしまっている。しかし、前作との同時試写の結果、東映の上層部も前作の一元描写でリアルな描写の方を支持。我が意を得た斎藤安代と長谷川公之は自信をつけ、これでシリーズの方向性は完全に決まった。