海外版DVDを見てみた 第12回『ジョージ・キング『スライ・コーナーの店』、『禁断の恋』を見てみた』 Text by 吉田広明
今回取り上げるのはやはり47年に撮られたイギリス作品『スライ・コーナーの店』The shop at Sly Cornerと、その翌年に撮られた『禁断の恋』Forbidden。といってもこれらはフィルム・ノワールではない。犯罪ドラマ=スリラー=サスペンスであることは確かだが、世界観から言ってノワールとはやはり言えないように思う。まあ、この頃に撮られた犯罪映画がすべてノワールだということはあり得ない話なので、ともあれイギリスのジャンル映画の一部門である犯罪ものを概観する一環として、今回の作品もあると考えていただく。そもそもノワールというのはジャンルならざるジャンル、後世の人間が見て、これは世界観、表現の特性から言ってただの犯罪映画ではないのでは、何か新しい呼称でくくるべきでは、ということで発明した批評的概念であって、当時そうした映画を作っている人はノワールを作っていると思っていない。極端なことを言えば、見た人間がこの作品はノワールでは、と言えばノワールとなるわけなのだ。しかしノワールとしてくくられる特徴が出現するある程度歴史的な条件というのがあり、無暗やたらとノワールと言ってしまうのは考えものなのではあるが。この辺のことについては、いずれネオ・ノワールを取り上げる時にまた考えようと思う。