――林さんもコーヒーのハシゴにつきあわせられたんですか。

林そや、やりましたな。アホみたいに飲みましたさかいな。

――酒が飲めないのに肝臓で亡くなったんですね。

林私の会社であいつの仕事を仕上げしてて、確か勝プロのテレビやね。終わって試写見て、それから4日ぐらいで死におった。電話もらって駈けつけて、泣きましたよ。

――最後の仕事のときはもう入院されていたんでしょう。森田（富士郎）さんが見舞いに行って、足の裏まで黄疸が出て真っ黄だったと言ってました。

林入院してましたよ。ちょこちょこ出てきよって仕事をしよった。疲れ切った顔しとったわ。

――仕事はやりやすい方ですか。

林うるさいほうだったと思いますよ。ごちゃごちゃ注文が細かいし。でもうるそうてかなわんというほどではない。人にもよると思うけど。

――具体的には？

林意見の交換ということですね。「こうしたらどうや」とか「こうならんか」とか言うんです。でもそれも誰とでもやっているわけではないから、人によるんでしょう。案外人みしりするほうやったから。

――耳はいいんですか。音楽に詳しいとか。

林耳はいいほうだったと思います。音楽にはあんまり詳しゅうない。そやけど私らと一緒にやるときは、「ここはあの楽器の音を抜いてや」とか「この音をもっと足して厚うしてや」とかは言うてたわね。

――リアリズムではないんですね。

林刀のカチ合いの音でも音を足したりしてましたからね。

――とくに『子連れ狼』ではそうですね。劇画の映画化でデフォルメされてますから。

林そうやね。あのね、あの刀のカチ合いの音は大映では私が最初につけたんです。カキンカキンというやつ。

――最初の作品はなんですか。

林忘れてしもうた。思いついたことをやったんですけどね。

――ブスッとかザバッとかの斬殺音もそうですか。

林そうです。ブリやハマチの大きいの買（こ）うてきてもろうて、包丁で刺したり突いたりするんです。あとで食べてね（笑）。