『オーネット:メイド・イン・アメリカ』
チェルシー・ホテルに住んでいた頃のシャーリー・クラーク(1970)
オーネット・コールマン、ハリウッド
クラークは85年に長編として最後の『オーネット:メイド・イン・アメリカ』Ornette: Made in Americaを撮る。フリー・ジャズの創始者であるオーネット・コールマンのドキュメンタリー(?)なのだろうが、ソフトが手に入らず、筆者は見ていない。はっきりジャズ・ミュージシャンを主題に取りあげた作品でもあり、クラークとジャズを考える上では重要な作品と思われるのだが。
クラークはグリニッジ・ヴィレッジの、芸術家などセレブの住むことで有名なチェルシー・ホテルに住み、ヴィデオ作品をそこで作っていたようだ。そこにロジャー・コーマンが訪ねて来て、映画を撮らないか、と言ってきた。実際撮影にまで入ったらしいのだが(具体的な作品名は不詳)、何故抑えのショットを撮らないのか、とコーマンに言われ、抑えのショットというのが判らなかったらしい。コーマンは、ワイドで同じ場面を撮っておくとか、クロース・アップで撮っておくとか、編集でリズムを出すために使うショットだ、と説明したが、そんなものを撮る必要を認めなかったクラークは、結局コーマンの下でハリウッド・デビューすることはなかった。また、『クール・ワールド』を見たオットー・プレミンジャーが会いたいと言ってきたが、プレミンジャーは、しばらく彼女と話して直ぐ諦めたという。また、シェリー・ウィンタースが書いた脚本の監督を務める予定だったとも言われる(全て前掲のインタビューによる)。ハリウッドでの映画の計画がなかったわけではないし、またクラークがそれに全く乗り気でなかったわけでもない。実際、『クール・ワールド』には、ジャンル映画のような側面もあるのであって、そういうものが彼女に撮れなかった訳でもないだろうと思う。コーマン製作の作品が実際に撮られていれば、あるいはクラークも、例えばモンテ・ヘルマンのような前衛性と商業性を併せ持つ画期的な映画作家になっていたのかもしれない。ちょっと残念な気はする。
『ジェイソンの肖像』Portrait of JasonはイギリスのSecond Runから発売。字幕なし。リージョンは日本と同じだが、Pal版。