岡田茉莉子シリーズ
近鉄金曜劇場で岡田茉莉子シリーズが始まるのは、その翌年1965年である。女優の名前を冠した連続ドラマはそれまでもあったが、多くは文豪名作をドラマ化したもので、30分枠のものが多かった。岡田茉莉子シリーズは、全13回、オリジナル・ドラマを中心に、八住利雄、平岩弓枝、新藤兼人、橋田寿賀子など一流の脚本家が脚本に参加し、演出家も当時成長株であった大山勝美が中心に担当する一話完結の一時間ドラマ(56分枠)であった。内容は現代劇、明治もの、時代劇など多様だが、毎回ドラマの実験性と高い質で話題になった。プロデューサーは石井ふく子。
第一回は『ある女の影』。脚本は夫君・吉田喜重によるオリジナルであった。吉田は『日本脱出』の件で松竹と揉め、次回作の森田草平原作の「煤煙」は岡田茉莉子プロデュースの第3回作品でもあったが、当然映画化は絶望的になった。「煤煙」は1955年に成瀬巳喜男も猪俣勝人脚本で映画化を試みたことがある企画であった。『ある女の影』の演出は大山勝美。彼はこの年、『楡家の人びと』(65)で第3回ギャラクシー賞個人賞を受賞する。演出補に村木良彦、音楽は武満徹である。
「岡田茉莉子シリーズ」全13回のタイトルとスタッフ・キャストは、次のとおり。
1.『ある女の影』(1965年2月5日放映)
脚本=吉田喜重 演出=大山勝美
共演=原知佐子、弓恵子、神山繁、田口計、小池朝雄
2.『居留地の女』(1965年2月12日放映)
脚本=平岩弓枝
共演=木村功、南美江、山岡久乃、清村耕次
3.『猫のいる家』(1965年2月19日放映)
脚本=八住利雄 演出=大山勝美
共演=杉村春子、京塚昌子、岩下浩、桑山正一
4.『髪を売る女』(1965年2月26日放映)
脚本=茂木草介
共演=根上淳、纓片達雄、香月京子、多々良純
5.『徴税日誌』(1965年3月5日放映)
脚本=八木柊一郎 演出=大山勝美
共演=加藤嘉、織賀邦江、金井大、斎藤美和
6.『舞扇』(1965年3月12日放映)
脚本=橋田寿賀子(原作=芝木好子)
共演=山村聰、市川翠扇、田村奈己
7.『誰に告げん』(1965年3月19日放映)
脚本=八木柊一郎 演出=井尻益次郎
共演=宗方勝巳、渚健二、磯村みどり、遠藤辰雄
8.『バナナの皮』(1965年3月26日放映)
脚本=矢代静一 演出=柴田敏行
共演=小山田宗徳、大森暁美、河野秋武、福山博寿
9.『逃げ水』(1965年4月2日放映)
脚本=田井洋子(原作=水芦光子) 演出=岩崎守尚
共演=江原真二郎、川口敦子、芦田伸介
10.『夫婦』(1965年4月9日放映)
脚本=依田義賢
共演=三橋達也、毛利菊枝、岩田直二、永田光男
11.『貴船川』前後篇(1965年4月16日、4月23日放映)
脚本=新藤兼人(原作=水上勉) 演出=大山勝美
共演=乙羽信子、夏川大二郎、津川雅彦、山岡久乃
12.『花は木が枯れるまで咲く』(1965年4月30日放映)
脚本・演出=木下惠介
共演=福田豊士、青城直人、高橋とよ