ゲリンの長編第1作は、陽光あふれる森、川のせせらぎ、 画面いっぱいに広がる草原、曲がりくねって地平線まで続く一本道、 風にそよぐ麦の穂そして自転車に乗る少女で出来ている。 父の農作業を手伝うベルタは無口な娘。ある日、草原で 不思議な帽子をかぶった男と出会う。それ以来、普段の生活に 波風が立ち始め、やがて町から撮影隊がやってくる…。 思春期の少女の内面を映画の原風景として描いた 衝撃のデビュー作! ロメール作品で名高い女優・歌手のアリエル・ドンバール出演。


1930年のある朝、忽然と消えてしまったアマチュア映画監督。 その3ヶ月前に彼は自分の家族を撮影していた。 ゲリンは彼の残した古いフィルムを使い新たな映画を作りだす。 家族の住んでいた家を訪ね、無人の邸内で 光と影の戯れにレンズを向ける。 傷んだモノクロフィルムによるシュールな映像と 色鮮やかな色彩で撮られた風景が巧みな編集で ミステリアスな物語を紡ぎだす。 "失われたもの"をめぐる前衛的メロドラマの傑作!


フランスのクリス・マルケル監督による実験映画の傑作 「ラ・ジュテ」('62)を想起させる無数のモノクロ・スチル。 「シルビアのいる街で」の構想ノートあるいは 作家ゲリンの内面に追ったデッサン集ともいえる本作は、 22年前に知り合った女性の面影を追う男と 映画製作の準備を進める映像作家の想念が みるものに思考の揺らぎをもたらす詩的な一編。 「シルビアのいる街で」はどのように生まれたか?


出演:グザヴィエ・ラフィット、ピラール・ロペス・デ・アジャラ

6年前に愛し合った女性シルビアの面影を求めて 想い出の地をさまよう画家志望の青年。 アルフレッド・ヒッチコックの「めまい」を想起させる 美女の追跡劇と恋物語が、緻密な音響設計と映像で構成され みるものをどことも知れぬ異空間へと誘う。 フランスの古都ストラスブールでオールロケを敢行した本作は、 ゲリン入門編として最適の1本である。


ジョン・フォードが故郷へオマージュを捧げた 傑作「静かなる男」の舞台、 アイルランドのイニスフリーをめぐるドキュメンタリー。 テクニカラーの華麗な色彩で描かれる ジョン・ウェインとモーリン・オハラの恋物語を直接引用しつつ、 今も撮影当時そのままの姿で残る緑溢れる村々や 自然と共に生きる人々を劇映画の手法を用いながら描いた作品。 ゲリンの映画愛に震える一編。


ロマンチストで幻視者の一面をもつゲリンだが、本作では うって変わった社会派ドキュメンタリストの顔をのぞかせている。 数年に渡りバルセロナの歴史地区、エルバラルの 大規模再構築現場を記録した映像は、 都市郊外の変貌をみつめそこに住む人々の日常や 壊れゆく風景を優しく切り取っていったもの。 過去と未来のイメージに現在を重ね合わせた ドキュメンタリー映画の傑作! スペインの権威あるゴヤ賞最優秀ドキュメンタリー賞を獲得した。


世界中の映画祭に招待された「シルビアのいる街で」。 映画と共に数多くの国々を訪れたゲリンは、 自ら小型のデジタルカメラを抱え次回作の構想をねりながら 行く先々の人々や都市の光景を撮影。 映画祭の喧騒をあえて撮らず、街で暮らす人たちの懐に飛び込み 彼らの生々しい存在感を写しとった映像は、 ドキュメンタリー映画を数多く手がけたゲリンならでは。 クールなモノクロ画面に都会の孤独と憂愁が滲む。


アメリカにおける前衛映画の旗手ジョナス・メカス。 リトアニア生まれの彼は自身の日常を叙情的に描く "日記映画"の達人である。 「ゲスト」に文字通りゲスト出演したメカスとかつての リュミエールにならってビデオカメラを片手に世界を放浪するゲリン。 魂の交流は見るものの思考を快よく刺激する。 2人の紡ぎだす映像が俳諧の連句を想わせるさまは 実にスリリング!