ジャン=ピエール・メルヴィル監督作のDVDといえば、撮影監督ピエール・ロム(1930年生まれ)の監修により2004年に修復され、米国でも2006年に初公開され話題を集めた伝説的傑作『影の軍隊』(1969)のDVDが各国から出ている。日本でも2003年に東北新社から、修復前の原版によりDVD化されていたが廃盤。日本盤は137分。144分の完全版はWOWOWで放映。
ジョーゼフ・ケッセル(1898−1979)の同名小説(1943)に基づくレジスタンスもの。原作邦訳は早川書房より刊行(1970)。フェミス(フランス国立映像音響学院)でのAFC(フランス映画撮影監督連合)向け修復版試写の際の撮影と修復にまつわるロムの講演は、AFCの機関誌『Lumiere』(2006年。1号)に掲載されている。
ピエール・ロムの撮影監督作には、以下のものがある。カルト作のオンパレードだ。マリー・ラフォレ主演『赤と青のブルース』(1961。監督マルセル・ムーシ)、ロミー・シュナイダー、ジャン=ルイ・トランティニャン主演『島での戦い Le combat dans l'ile』(未。1962。監督アラン・カヴァリエ)、『美しき五月 Le joli mai』(1963。監督クリス・マルケル、ピエール・ロム)、カトリーヌ・ドヌーヴ主演『城の生活』(1966。脚本カヴァリエ、監督ジャン=ポール・ラプノー)、『風景の変貌』(DVD題。TV番組。1964。監督エリック・ロメール。5月26日発売のDVD『友だちの恋人』の特典)、『まぼろしの市街戦』(1966。監督フィリップ・ド・ブロカ)、『未来展望』(オムニバス『愛すべき女・女(めめ)たち』の一編。1967。監督ジャン=リュック・ゴダール)、カトリーヌ・ドヌーヴ主演『別離』(1968。監督アラン・カヴァリエ)、『ミスター・フリーダム』(1969。監督ウィリアム・クライン)、『白夜』(1971。監督ロベール・ブレッソン)、チャールズ・ブロンソン、アンソニー・パーキンス主演『扉の影に誰かいる』(1971。監督ニコラ・ジェスネル)、『ママと娼婦』(1973。監督ジャン・ウスタシュ)、『スウィート・ムービー』(1974。監督ドゥシャン・マカヴェイエフ。
クライテリオン盤DVD)、シャーロット・ランプリング主演『蘭の肉体』(1975。監督パトリス・シェロー)、ドミニク・サンダ、ビュル・オジエ主演『船舶ナイト号 Le Navire-Night』(特殊上映題。監督マルグリット・デュラス)、ジェイン・バーキン主演『放蕩娘 La fille prodigue』(特殊上映題。1981。監督ジャック・ドワイヨン)、『カルテット』(1981。監督ジェイムズ・アイヴォリー)、『死への逃避行』(1983。監督クロード・ミレール)、『モーリス』(1987。監督ジェイムズ・アイヴォリー)、『カミーユ・クローデル』(1988。監督ブリュノ・ニュイッテン)、『シラノ・ド・ベルジュラック』(1990。監督ジャン=ポール・ラプノー)。日本未公開の
『島での戦い』のDVDは、英C'est La Vieから2004年10月25日に発売された。英語字幕付き。トランティニャンは極右団体のテロリストに扮する。『突然炎のごとく』(1961。監督フランソワ・トリュフォー)のアンリ・セールも共演。なおマカヴェイエフ監督の『WR:オルガニズムの神秘』(1971)のDVDも同時発売。
2006年5月23日にスペインのユニヴァーサル・ピクチャーズから出た『影の軍隊』DVDは、139分。2005年3月29日発売のフランスのステュデオ・カナル盤(廃盤。
レヴュー dvdclassik.com / dvdrama.com)の原版と同じと思われる。仏語・スペイン語音声、字幕は英語、スペイン語、独語、フィンランド語、スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェイ語、ポルトガル語、ポーランド語、チェコ語、ハンガリー語、オランダ語。
2006年11月27日に英国BFIから出た『影の軍隊』DVD(レヴュー)は、145分。『ジャン=ピエール・メルヴィル:パリのアメリカ人』(BFI、2003)の著者ジネット・ヴァンサンドーによる音声解説付き。また帝国戦争博物館所蔵の記録映像『レジスタンスの記録 Le Journal de la Resistance』 (1945。33分。英語ナレーター、ノエル・カワード)、撮影現場のメルヴィルを収めた1968年の記録映像(4分。カラー)も付く。
メルヴィルの日本語ファン・サイト「LE CERCLE ROUGE」
メルヴィルについては、ルイ・ノゲイラ著『サムライ−ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』(2003、晶文社)をも参照。日本語版には、矢作俊彦と押井守による『リスボン特急』についての対談収録。
5月15日発売の
北米クライテリオン盤『影の軍隊』特別盤(2枚組)も、145分の本編に、BFI盤同様、ヴァンサンドーの音声解説に加え、さらに独自の特典映像が付く。ピエール・ロムと編集技師フランソワーズ・ボノのインタヴューも収録。フランソワーズ・ボノ(1939年生まれ)は、編集技師モニク・ボノの娘で、『ジュリア』(1977。監督フレッド・ジネマン)と池田理代子原作『ベルサイユのばら』(1979。監督ジャック・ドゥミ)で助監督をつとめたTV演出家アラン・ボノの姉妹。またトルコ出身のアルメニア系フランス人アンリ・ヴェルヌイユ(1920−2002)の妻で、TV演出家パトリック・マラキアン(1963年生まれ)は息子。
モニク・ボノは、短編『ある道化の人生の24時間 Vingt-quatre heures de la vie d'un clown』(1945。18分)以後、『サムライ』(1967)に至るメルヴィル作品の編集を手がけ、また製作者ジョルジュ・ド・ボールガールの要請により、ヌーヴェル・ヴァーグの傑作『アデュー・フィリピーヌ』(DVD題。1962。監督ジャック・ロジエ)の編集も手がけている。 『アデュー・フィリピーヌ』は世界に先駆け、紀伊國屋書店によりDVD化されたが、2007年1月24日、イタリアの20世紀フォックスからイタリア語版『太陽の中の欲望 Desideri nel Sole』のDVDが出た。『ある道化の人生の24時間』は韓国のAlto Mediaから2004年5月7日に出たDVD『彼らの最初の映画 Their First Films』(レヴュー)に収録されていたが廃盤。英語字幕付き。主演はロベール・ブレッソン監督の短編『公共問題 Les Affaires publiques 』(特殊上映題。1934)に主演していた道化のベビ。
他の収録作は、『愛は存在する』(特殊上映題。1961。監督モリス・ピアラ。19分。カラー)、『スチレンの唄』(1957。監督アラン・レネ。14分。カラー)、『シャルロットとジュール』(1958。監督ジャン=リュック・ゴダール。13分)、『王手飛車取り』(1956。監督ジャック・リヴェット。27分)、『水の話』(1958。監督フランソワ・トリュフォー&ジャン=リュック・ゴダール。12分)、『不安の実験室 Le laboratoire de l'angoisse』(1971。監督パトリス・ルコント。11分。カラー)、『こきつかわれた連中 Les surmenes』(監督ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ。19分。脚本にフランソワ・トリュフォー参加。音楽ジョルジュ・ドルリュー)。
『影の軍隊』はクライテリオン盤DVDが決定盤かと思われたが、なんと3月29日に、ドイツのユニヴァーサル・ピクチャーズからHD DVD盤発売。これは、フランスのステュディオ・カナルから発売予定の盤と同一マスター。同時発売は、やはりカナル原版の『アリゾナ・ドリーム』(1992。監督エミール・クストリッツァ)と『乱』(1985。監督・黒澤明)。5月21日にフランスのステュデイオ・カナルからHD DVD盤が発売。何度か発売延期になっていた。同社のHD DVD第1弾の15タイトルの1本だ。2006年に告知された20タイトルにはメルヴィル監督の『仁義』(1970)も入っていた。
『影の軍隊』HD DVDの仕様は、仏語音声がDTS−HDマスター・オーディオ4.0、独語音声がDTS・ハイレゾルーション2.0。字幕は独語・オランダ語・デンマーク語・ノルウェイ語・スウェーデン語・フィンランド語。ちなみに、他のタイトルは『トラフィック』(2000。監督スティーヴン・ソダーバーグ)、『卒業』(1967。監督マイク・ニコルズ)、『ワンス・アンド・フォーエバー』(2002。監督ランドール・ウォレス)、『コンドル』 (1975。監督シドニー・ポラック)、『ディア・ハンター』(1978。監督マイケル・チミノ)、『アリゾナ・ドリーム』(1992。監督エミール・クストリッツァ)、『セルピコ』(1973。監督シドニー・ルメット)、『マルホランド・ドライブ』(2001。監督デイヴィッド・リンチ)、『ターミネーター2』(1991。監督ジェイムズ・キャメロン)、『リービング・ラスベガス』(1995。監督マイク・フィギス)、『乱』(1985。監督・黒澤明)、ルイ・ド・フュネス、ブルヴィル主演『大進撃』(1966。監督ジェラール・ウーリー)、『ジェヴォーダンの獣』(2001。監督クリストフ・ガンス)、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004。監督クリント・イーストウッド)。
ステュディオ・カナルのHD DVDの記事
仏語
アラン・ドロンとカトリーヌ・ドヌーヴが共演した、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の遺作『リスボン特急』のDVDは、北米では2001年にアンカー・ベイから出ていたが廃盤。フランスのステュディオ・カナルから2005年5月16日に出た『リスボン特急』DVDも廃盤。英国のワーナーからは、ステュディオ・カナル原版の『賭博師ボブ』+『リスボン特急』の2本立てDVDが、2005年4月4日に出ているが、これも廃盤。英オプティマム・ホーム・エンターテインメントから、5月7日に『リスボン特急』のDVDが出る。 また6月25日には、オプティマムから『アラン・ドロン−スクリーン・アイコンズ・コレクション』DVD−BOX(4枚組)が発売される。収録作は、『リスボン特急』(1972。監督ジャン=ピエール・メルヴィル)、『太陽がいっぱい』(1960。監督ルネ・クレマン)、『太陽はひとりぼっち』(1962。監督ミケランジェロ・アントニオーニ)、『ショック療法』(1973。監督アラン・ジェシュア)。『ショック療法』のDVDは、2005年5月16日に、フランス、ステュディオ・カナルから出ている。国内盤は東北新社から2001年に出ていたが廃盤。アラン・ドロンとアニー・ジラルドという『若者のすべて』(1960。監督ルキーノ・ヴィスコンティ)のコンビ再共演。アニー・ジラルドは、近年、ミヒャエル・ハネケ監督の『ピアニスト』(2001)や『隠された記憶』(2005)に出ている。
オプティマムからは同じ6月25日に、『ジャン=ポール・ベルモンド−スクリーン・アイコンズ・コレクション』DVD−BOX(5枚組)も発売。収録作は、『プロフェッショナル Le professionel』(放映題。1981。監督ジョルジュ・ロトネール)、『勝手にしやがれ』(1960。監督ジャン=リュック・ゴダール)、『気狂いピエロ』(1965。監督ジャン=リュック・ゴダール)、『薔薇のスタビスキー』(1974。監督アラン・レネ)、『二重の鍵』(1959。監督クロード・シャブロル)。『プロフェッショナル』のDVDは、フランスではカナル・プリュス・ヴィデオから出ていたが廃盤。北米では、イメージ・エンターテインメントからDVDが出ている。
『薔薇のスタビスキー』DVDも、フランスのステュデオ・カナルと、北米のイメージ・エンターテインメントから出ていたが共に廃盤。『ミュンヘン』(2005。監督スティーヴン・スピルバーグ)のマイケル・ロンズデイルや、『ブッシュ・ド・ノエル』(1999。監督ダニエル・トムソン)のクロード・リッシュ、『ルービッチュの小間使』(DVD題。1946。監督エルンスト・ルービッチュ)のシャルル・ボワイエ、「第27回」で紹介した『獅子座』(1959−63。監督エリック・ロメール)のヴァン・ダウデらも出演。
上記2コレクションに先立って、オプティマムからは、5月28日に『ダーク・ボガード−スクリーン・アイコンズ・コレクション』DVD−BOX(5枚組)が発売される。収録作は、『できごと』(1967)、『召使』(1963)、『兇弾』(1950。監督バジル・ディアデン)、『銃殺』(1964)、『眠れる虎 Sleeping Tiger』(1954。監督ジョーゼフ・ロウシー)、『犠牲者 Victim』(1961。監督バジル・ディアデン)。このうち『兇弾』は、2006年8月21日、
単品でDVD化されている。
ダーク・ボガード(1921−99)は、日本では、ジョーゼフ・ロウシー監督作と共に、ルキーノ・ヴィスコンティ監督の『地獄に堕ちた勇者ども』(1969)と『ベニスに死す』(1971)が広く知られているが、ボガードBOXの発売は、ボガード・ファンのみならず、ジョーゼフ・ロウシー・ファンにとっても嬉しいニュースだ。また『召使』、『できごと』の脚本家ハロルド・ピンター(1930年生まれ)が、劇作から退いた2005年、ノーベル文学賞を受賞したのも記憶に新しい。とりわけ、日本未公開、未放映の赤狩り時代のロウシー初の英国映画、サイコ・ノワール『眠れる虎』は貴重。ロウシーも変名でクレジットされたが、脚本のカール・フォアマン(1914−84)も変名でクレジットされている。『真昼の決闘』(1952。監督)の脚本家フォアマンは、ピエール・ブールの小説に基づく『戦場にかける橋』(1957。監督デイヴィッド・リーン)でもクレジットを出せず、アカデミー賞脚本賞の名誉を受けられず、アリステア・マクリーンの冒険小説(1957)に基づく『ナバロンの要塞』(1961。監督J・リー・トンプソン)で久々にクレジットを回復する。ボガードが演じるのは、アレグザンダー・ノックス扮する精神分析医宅に強盗に入り、逆に半年間の生体実験材料に使われる男フランク。アレクシス・スミス扮する医師の妻グレンダは、フランクに執着するようになる。
カナダ生まれの女優アレクシス・スミス(1921−1993)が、エロール・フリンと共演したボクシング映画『鉄腕ジム』(1942。監督ラウル・ウォルシュ)のDVDは、3月27日、米ワーナーから発売。同作収録の『エロール・フリン・シグネチャー・コレクション第2巻』には、他に『進め龍騎兵』(1936。監督マイケル・カーティーズ)、『ドン・ファンの冒険』(1948。監督ヴィンセント・シャーマン)、『暁の偵察The Dawn Patrol』(ビデオ題。1938。監督エドマンド・グールディング)、『急降下爆撃隊 Dive Bomber』(放映題。1941。監督マイケル・カーティーズ)収録。『暁の偵察』は同名のハワード・ホークス監督作(1930)のリメイク。
カナダ出身の俳優アレグザンダー・ノックスは、1907年1月16日生まれなので今年が生誕100年。彼がイングリッド・バーグマンと共演した『ヨーロッパ一九五一年』(1952。監督ロベルト・ロッセリーニ)のDVDは、ジェネオン・エンタテインメントから2001年にイタリア語版の国内盤が出ていたが廃盤。イタリア語版のDVDは、スペインのLlamentol S.L.から2004年9月16日に出ている。音声は伊語・スペイン語、字幕はスペイン語のみ。110分。
「第13回」で紹介した『原子人間』(1955。監督ヴァル・ゲスト)、『マダムと泥棒』(1955。監督アレグザンダー・マッケンドリック)のジャック・ウォーナー、『宇宙原水爆戦・人工衛星X号』(1956。監督ポール・ディクソン)のジミー・ハンリー主演の『兇弾』は、ロンドンのメトロポリタン警察の協力を初めて得た犯罪映画。製作者はマイケル・バルコン。『犠牲者』は、ボガードがゆすられるゲイの弁護士を演じる異色犯罪ドラマ。脚本は、ジョン・フォードの遺作『荒野の女たち』(1966)のジャネット・グリーンとジョン・マッコーミックのコンビ。
バジル・ディアデン監督作では、『紳士同盟』(1960。監督ディアデン)のリチャード・アッテンボロー、『マーティ』(1955。監督デルバート・マン)、『さすらい』(1957。監督ミケランジェロ・アントニオーニ)のベッツィ・ブレア、パトリック・マッグーハンら出演の『一晩中 All Night Long』(1961)のDVDも英Networkから4月16日発売。ドイツのAmCo Tontragerからも3月20日に発売されている。
『一晩中』の脚本はネル・キングと、赤狩りにより変名を用いている『地の塩』(1953。監督ハーバート・ビーバーマン)のポール・ジャリコ(1915−97)。物語は『オセロ』のスウィンギング・シックスティーズ版。マッグーハンは嫉妬に狂うジャズ・ドラマーを演じる。ジャズ・ファンにとっても、デイヴ・ブルーベック(1920年生まれ)、キース・クリスティ(1931−80)、『コンクリート・ジャングル』(1960)、『召使』(1963)、『唇からナイフ』(1966)、『できごと』(1967)などのロウシー作品の音楽でも知られるジョニー・ダンクワース(1927年生まれ)、タビー・ヘイズ(1935−73)、チャールズ・ミンガス(1922−79)、後に『おませなツインキー』(1969。監督リチャード・ドナー)などの映画音楽家となるジョン・スコット(1930年生まれ)らのトップ・ミュージシャンの出演が見逃せない。
『チャーリーとチョコレート工場』(2005。監督ティム・バートン)でナレーターをつとめ、『007/死ぬのは奴らだ』(1973。監督ガイ・ハミルトン)や『アニー』(1982。監督ジョン・ヒューストン)に出演している、ダンサー、振付師のジェフリー・ホールダー(1930年生まれ)もカメオ出演。パトリック・マッグーハン(1928年生まれ)といえば、日本ではTVシリーズ『秘密命令』(1960−62)、『秘密諜報員ジョン・ドレイク』(1964−66。監督スチュワート・バージ、ドン・チャフィ)、『プリズナーNo.6』(1967−68)や『アルカトラズからの脱出』(1979。監督ドン・シーゲル)の刑務所長役など、あるいはTVシリーズ『刑事コロンボ』最大の異色作といわれる『さらば提督』(1975)ほかの監督としておなじみだろう。『秘密命令』第1シーズン全集DVD−BOX(5枚組)は、
米A&Eから2003年に出ている。『プリズナーNo.6全集』(40周年記念版)DVD−BOX(10枚組)は、A&Eから2006年7月25日発売。『秘密諜報員ジョン・ドレイク全集』DVD−BOX(18枚組)は、
A&Eから2007年2月27日発売。
無名時代のマッグーハンが出ている異色作『地獄特急』(1957。監督サイ・エンドフィールド)のDVDは、2004年1月26日に英ITVから発売されていたが、英Networkから3月19日に「特別版」と称する新盤が出た。アイルランド系の彼がアイルランド人に扮した唯一の出演作だ。過酷な労働を強いられる、砂利を運ぶトラック運転手たちの物語。
主演は『コンクリート・ジャングル』(1960。監督ジョーゼフ・ロウシー)、『エヴァの匂い』(1962。監督ジョーゼフ・ロウシー)のスタンリー・ベイカー。共演は、『拳銃魔』(1950。監督ジョーゼフ・H・ルイス)のペギー・カミンズ、『マダムと泥棒』(1955。監督アレグザンダー・マッケンドリック)、『戦争と平和』(1955。監督キング・ヴィドア)のハーバート・ロム。TVシリーズ『0011ナポレオン・ソロ』(1964−68)のイリヤ・クリヤキン役でおなじみ、デイヴィッド・マッカラムも出ていて、この映画で共演したジル・アイアランドと1957年5月11日結婚。アイアランドは1967年に離婚し、1968年10月5日、チャールズ・ブロンソンと再婚する。彼女をブロンソンに紹介したのは、『大脱走』(1963。監督ジョン・スタージェス)出演中のマッカラムだった。『地獄特急』には、無名時代のショーン・コネリーも出ているので、60年代にスパイ役で人気を得るマッグーハン、マッカラム、コネリーの3人が共演しているというのも興味深い。ちなみに『OO7/ドクター・ノオ』(1962。監督テレンス・ヤング)のボンド役候補には、ロジャー・ムーアと共にマッグーハンも挙がっていた。
『地獄特急』抜粋映像
マッグーハンは、『日曜はダメよ』(1960。監督ジュールス・ダッシン)のメリナ・メルクーリ主演、監督ジョーゼフ・ロウシーの『ジプシーと紳士 The Gypsy and the Gentleman』(1958)にも出演している。同作のDVDは
ギリシャのModern Timesから出ている。英語音声、ギリシャ語字幕。
ここでダーク・ボガートの話に戻る。以下、今日、日本で観る機会の乏しいと思われる主演作のDVDをいくつか紹介する。ジーン・シモンズ共演の『博覧会場へ行ったきり So Long at the Fair』(1950。監督アントニー・ダーンボロー、テレンス・フィッシャー)のDVDは、
スペインのフィルマクスから出ている。ヒッチコックもお気に入りだったという、1889年のパリ万博を背景とする有名な都市伝説に基づくスリラーの小品。
ダーンボロー(1913−2000)は、サマーセット・モームの初期短編4話に基づく『四重奏』(1948。ボガード主演の『変りだね』の挿話の監督はハロルド・フレンチ)の製作者。テレンス・フィッシャーとの共同監督作に、もう1本、ノエル・カワード原作の『驚いた心 The Astonished Heart』(1949)がある。ルイス・マイルストン監督のテクニカラー戦争ドラマ『断固戦う人々』(1954)のDVDは2007年1月29日、オプティマムから単品で出た。ギリシャ、ロードス島にあるドイツ軍の二つの飛行場を爆破するイギリス陸軍特別舟艇隊を描く。
『将軍月光に消ゆ』(1957。監督マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー)は英ITV DVDから出ている。2006年11月20日に出た『パウエル&プレスバーガー・コレクション』DVD−BOX(11枚組)にも収録。他の収録作は、『天国への階段』(1946)、『赤い靴』(1948)、『老兵は死なず』(1943)、『カンタベリー物語 A Canterbury Tale』(1944)、『渦巻』(1945)、『潜水艦轟沈す』(1941)、『戦艦シュペー号の最後』(1956)、『奴らは奇妙なギャング They're A Weird Mob』(1966)、『ホフマン物語』(1951)、『黒水仙』(1947)。『将軍月光に消ゆ』は、英グラナダ・ヴェンチャーズから2006年7月21日に出た『パウエル&プレスバーガー・コレクション』DVD−BOX(9枚組)にも収録。他の収録作は『天国への階段』、『赤い靴』、『老兵は死なず』、『カンタベリー物語』、『潜水艦轟沈す』、『戦艦シュペー号の最後』、『渦巻』、『奴らは奇妙なギャング』。
パウエル&プレスバーガーのDVD(英語)
『マインド・ベンダース Mind Benders』(ビデオ題。1962。監督バジル・デアディン。レヴュー)のDVDは、米アンカー・ベイから出ている。音楽はジョルジュ・オーリック。ボガードは、自殺した同僚が共産主義者に洗脳されていたことを証明するため自ら実験台になり、妻への愛情を失ってしまう、オックスフォード大学教授の科学者に扮する。『ダーク・ボガード・コレクション』DVD−BOXも2001年に出ていたが廃盤。他の収録作は、『できごと』と『召使』。 ジュディ・ガーランド共演『愛と歌の日々 I Could Go On Singing』(放映題。1963。監督ロナルド・ニーム。レヴュー)のDVDは、米MGMから出ている。これはガーランドの遺作となった。 ジェイン・バーキン共演のボガードの遺作『ダディ・ノスタルジー』(1990。監督ベルトラン・タヴェルニエ)のDVDは、フランスのステュディオ・カナルから出ている。監督のタヴェルニエは、ロウシー監督作のフランスでの宣伝を担当、その頃からボガードのファンだったという。「第8回」のピエール・リシアンに関する記述も参照。
1999年7月10日付、ベルトラン・タヴェルニエ・インタヴュー(英語)
英グラナダ・ヴェンチャーズから、本業外科医の作家リチャード・ゴードン(1921年生まれ)のベストセラーに基づく、ラルフ・トマス監督、ダーク・ボガート主演、サイモン・スパロウ医師ものDVDが出ている。日本公開作は、第2作にあたるブリジット・バルドー共演の『私のお医者さま Doctor At Sea』(1955)のみ。他にボガード主演『Doctor In The House』(1954)、ボガード主演『Doctor At Large』(1957)、リチャード・ヘア医師に扮するマイケル・クレイグ主演『Doctor In Love』(1960)、ボガード主演『Doctor In Distress』(1963)、ガストン・ギロムズダイク医師に扮するレズリー・フィリップス主演『Doctor In Clover』(1966。音楽ジョン・スコット)、トニー・バーク医師に扮するレズリー・フィリップス主演『Doctor In Trouble』(1970)がある。
ボガードBOXと同じ5月28日に出る『ジェイムズ・メイソン−スクリーン・アイコンズ・コレクション』DVD−BOX(4枚組)は『二つの世界の男』(1953。監督キャロル・リード)、『5本の指』(1952。監督ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ)、マーガレット・ロックウッド主演『灰色の男』(1943。監督レズリー・アーリス)、『邪魔者は殺せ』(1947。監督キャロル・リード)収録。実話に基づくスパイ・スリラー『5本の指』は、2004年8月23日に
単品でDVD化されている。「キケロ」の暗号名を付けられアンカラに潜入していたナチス・ドイツのスパイ、エリザ・バズナにかんするL・C・モイジッシュの回想録『キケロ作戦』(1950)に基づく。1962年には、キケロ自身の回想録『私はキケロだった』も出版されている。『私はキケロだった』は、『わが名はキケロ』の邦訳題で『世界ノンフィクション全集20』(筑摩書房、1968)に収録。
『バルカン超特急』(1938。監督アルフレッド・ヒッチコック)のマーガレット・ロックッド主演の『灰色の男』は19世紀のイングランドの寄宿女学校を舞台にした、ゲインズバロ撮影所初のゴシック・メロドラマ。共演は、『無分別』(1958。監督スタンリー・ドーネン)のフィリス・カルヴァート(1917−2002)。『邪魔者は殺せ』は、「第10回」で紹介した後、2007年2月24日、紀伊國屋書店から発売された『ルイス・ブニュエル DVD−BOX3』に収録された『ロビンソン漂流記』(1954)に主演しているアイルランド出身の俳優ダン・オハリヒー(1919−2005)も出演。ジェイムズ・メイソン(1909−84)は、日本では、ジュディ・ガーランド主演の『スタア誕生』(1954。監督ジョージ・キューカー)、「第2回」でも触れた『海底二万マイル』(1954。監督リチャード・フライシャー)、ケリー・グラント主演『北北西に進路を取れ』(1959。監督アルフレッド・ヒッチコック)や『ロリータ』(1961。監督スタンリー・キューブリック)あたりが有名だろう。
日本未公開のジェイムズ・メイソン主演作のDVDとしては、紀伊國屋書店から出ている、「第11回」で紹介した『魅せられて』(1949。監督マックス・オフュルス)、『ビガー・ザン・ライフ』(1956。製作ジェイムズ・メイソン、監督ニコラス・レイ)がある。ともに必見の異色作。このほか、メイソン主演作のDVDでお勧めなのは、「第11回」で紹介したマックス・オフュルス監督のもう1本のフィルム・ノワール『レックレス・モメント/愛と欲望の罠』(放映題。1949。レヴュー)の英セカンド・サイト盤DVD。共演は『扉の影の秘密』(1948。監督フリッツ・ラング)のジョーン・ベネット。エリザベス・サンゼイ・ホールディング(1889−1955)の同じ原作『The Blank Wall』(1947)は、『ディープ・エンド』(ビデオ題。2001。製作・監督スコット・マッギー、デイヴィッド・シーゲル)としてリメイクされている。『ディープ・エンド』のDVDは米20世紀フォックスから2002年に出ている。マッギー&シーゲルは、リチャード・ギア、ジュリエット・ビノシュ主演『綴り字のシーズン』(2005)の監督。『綴り字のシーズン』の国内盤DVDはフォックスから出ている。
その他、米フォックスから3月6日に出たジェニファー・ジョーンズ主演『ボヴァリー夫人』(1949。監督ヴィンセント・ミネリ)、同じくフォックスから2006年1月10日に出た『日のあたる島』(1957。監督ロバート・ロッセン。米盤DVDレヴュー
dvdbeaver.com / dvdtalk.com)、『マンディンゴ』(1975。監督リチャード・フライシャー)あたりが興味深い。『としごろ』(1969。製作ジェイムズ・メイソン、監督マイケル・パウエル)はDVD化が待たれる。ちなみに『ボヴァリー夫人』は『文芸古典コレクション』DVD−BOX(5枚組。レヴュー)にも収録。他の収録作は、『ゼンダ城の虜』(1937。監督ジョン・クロムウェル)+『ゼンダ城の虜』(1952。監督リチャード・ソープ。主演スチュワート・グレインジャー。ジェイムズ・メイソンも出演)、『三銃士』(1948。監督ジョージ・シドニー)、『艦長ホレーショ』(1950。監督ラウル・ウォルシュ)、『奴隷戦艦』(1962。監督ピーター・ユスティノフ)。『奴隷戦艦』は原題『ビリー・バッド』、原作はハーマン・メルヴィル(1819−1891)の遺作小説(1924年、死後出版)。2002年に米Aae Filmsから製作40周年記念版のビデオが発売されていたが、ついにDVDになって嬉しい。撮影は『邪魔者を殺せ』、『第三の男』(1949。監督キャロル・リード)、『夏の嵐』(1954。監督ルキーノ・ヴィスコンティ)のロバート・クラスカー。ビリー・バッド役は映画出演2作目のテレンス・スタンプ。彼はこの後、『コレクター』(1965。監督ウィリアム・ワイラー)、『唇からナイフ』(1966。監督ジョーゼフ・ロウシー)、『遥か群衆を離れて』(1967。監督ジョン・シュレシンジャー)、『夜空に星のあるように』(1967。監督ケン・ローチ)、『世にも怪奇な物語』(1968。スタンプ出演の第3話『悪魔の首飾り』の監督フェデリーコ・フェッリーニ)、『テオレマ』(1968。監督ピエル・パオロ・パゾリーニ)と異色作・問題作に出演し続ける。『奴隷戦艦』の共演は『最前線』(1957。監督アンソニー・マン)、『神の小さな土地』(DVD題。1958。監督アンソニー・マン)のロバート・ライアンとユスティノフ。
『艦長ホレーショ』はC・S・フォースター(1899−1966)の18世紀末以後の大英帝国海軍を舞台にした海洋冒険小説ホレイショ・ホーンボロワー(提督を経て元帥に出世)シリーズをフォースター自身が脚色した映画版。主演はグレゴリー・ペック。共演はヴァージニア・メイヨ。フォースターは『アフリカの女王』(1951。監督ジョン・ヒューストン)の原作となったいくつかの短編も書いている(脚色はヒューストンとジェイムズ・エイジー)。ホーンブロワーものはハヤカワ文庫NVから「海の男/ホーンブロワー」シリーズとして出ている(
ファンサイト)。同シリーズに基づき、イギリスのメリディアンTV制作のTVドラマシリーズ『ホーンブロワー 海の勇者』(1998−2002。監督アンドルー・グリーヴ)がヨアン・グリフィズ主演で、作られた。日本でもNHK衛星第2で放映され、ハピネットより国内盤DVD−BOX2巻(
1巻,
2巻)が発売中。『日のあたる島』の共演者は、以下の通り。『断崖』(1941。監督アルフレッド・ヒッチコック)、『忘れじの面影』(1948。監督マックス・オフュルス)のジェイン・フォンテイン、『カルメン』(1954。監督オトー・プレミンジャー)の主演コンビ、ドロシー・ダンドリッジとハリー・ベラフォンティ、『ピラミッド』(1955。監督ハワード・ホークス)、『夢去りぬ』(1955。監督リチャード・フライシャー)のジョーン・コリンズ、『5本の指』、イタリア=米国合作映画『マンボ』(1954。監督ロバート・ロッセン)のマイケル・レニー。撮影は『チップス先生さようなら』(1939。監督サム・ウッド)、『潜水艦轟沈す』、『モガンボ』(1953。監督ジョン・フォード)、『ドクトル・ジバゴ』(1965。監督デイヴィッド・リーン)のフレディ・ヤング(1902−98)。
「第26回」で紹介したように、「黒人月間」企画として、『キャビン・イン・ザ・スカイ』(DVD題。1943。監督ヴィンセント・ミネリ)、『ハレルヤ』(1929。監督キング・ヴィドア)、レックス・イングラム主演『緑の牧場』(1936。監督ウィリアム・キーリー、マーク・コネリー、音楽エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト)などと共に、2006年1月10日に、米20世紀フォックスからDVDが発売されたが、『緑の牧場』と本作の日本盤はまだ出ていない。リチャード・フライシャーが亡くなったのは「第2回」で触れたように、2006年3月25日。それから、ほぼ1年になる。『マンディンゴ』は、ドイツ・キノヴェルトなどからDVDが出ていたが、現在入手可能なのは、スペイン盤と北欧盤。「第11回」で紹介したように、2006年4月24日発売の北欧ユニヴァーサル・ピクチャーズ盤『マンディンゴ』は英語音声、字幕はスウェーデン語・ノルウェイ語・デンマーク語・フィンランド語。2006年7月18日発売のスペイン・ユニヴァーサル・ピクチャーズ盤は、スペイン語・英語・独語音声、字幕はスペイン語・独語・ポルトガル語。『マンディンゴ』の続編として作られたウォーレン・オーツ主演『ドラム』(1976。監督スティーヴ・カーヴァー)は、『マンディンゴ』と共に米Blax Filmから出ていたが廃盤。英Prism Leisure CorporationからもDVDが出ていたが廃盤。こちらもケン・ノートンが出演。『コフィー』(1973。監督ジャック・ヒル)のパム・グリアも共演。
オプティマムの「スクリーン・アイコンズ・コレクション」の第1弾として、3月12日に発売された、
『カトリーヌ・ドヌーヴ−スクリーン・アイコンズ・コレクション』DVD−BOX(5枚組)は、『シェルブールの雨傘』(1963。監督ジャック・ドゥミ)、『昼顔』(1967。監督ルイス・ブニュエル)、『ロバと王女』(1970。監督ジャック・ドゥミ)、『恋のマノン』(1967。監督ジャン・オーレル)、『私の好きな季節』(1993。監督アンドレ・テシネ)収録。ジャン=クロード・ブリアリ、サミー・フレイ共演の『恋のマノン』は初DVD化。『私の好きな季節』は、フランス、ステュディオ・カナルから2004年6月22日にDVDが出ていたが廃盤。北米盤DVDはフォックス・ローバーから1998年に出ていたが廃盤。ステュディオ・カナルからは、『アンドレ・テシネDVD−BOX』(5枚組)が2005年10月3日に出ていたが、これも廃盤。他の収録作は、『深夜カフェのピエール』(1991)、『海辺のホテルにて』(1981)、『野生の葦』(1994)、『夜の子供たち』(1996)。このDVD−BOXの発売直後の3月15日、東京、横浜、大阪で開催されたフランス映画祭2007が始まり、映画祭代表団団長としてドヌーヴが10年ぶりに来日し話題を集めた。
同じく3月12日に発売された、『ジュリー・クリスティ−スクリーン・アイコンズ・コレクション』DVD−BOX(4枚組)は、『恋』(1970。監督ジョーゼフ・ロウシー)、トム・コートニー主演『うそつきビリー Billy Liar』(1963。監督ジョン・シュレシンジャー)、テレンス・スタンプ共演『遥か群衆を離れて』(1967。監督ジョン・シュレシンジャー)、ローレンス・ハーヴェイ、ダーク・ボガード共演『ダーリング』(1965。監督ジョン・シュレシンジャー。音楽ジョン・ダンクワース)収録。
ダーク・ボガートとジュリー・クリスティの共演した『ダーリング』は、米MGMから2003年にDVDが出ている。英オプティマムでは、2006年3月5日に単品でDVD化されている。
日本未公開の『うそつきビリー』は、
米クライテリオンから2001年にDVDが出ている(レヴュー)。音声解説はジョン・シュレシンジャーとトム・コートネイとジュリー・クリスティ。英オプティマムでは、2006年9月11日に
単品でDVD化されている。
『うそつきビリー』は、キース・ウォーターハウスの小説(1959)に基づき、彼自身とウィリス・ホールが戯曲化し、1960年9月からロンドンのケンブリッジ劇場でロングランした舞台をさらに映画化したもの。戯曲版は2001年に西川信廣演出でテアトル・エコーにより日本初演された。 ウォーターハウスとホールは、ジョン・ミルズ夫人で主演のヘイリー。ミルズの母親でもある劇作家メアリ・ヘイリー・ベル(1911−2005)の原作に基づく映画『汚れなき瞳』(1961。製作リチャード・アッテンボロー、監督ブライアン・フォーブス)、スタン・バーストウの小説に基づく『或る種の愛情』(1962。監督ジョン・シュレシンジャー)、ロベール・マレの戯曲に基づく『巨艦いまだ沈まず』(1962。監督ロイ・ウォード・ベイカー)、ハワード・ファストの小説『ウィンストン事件』に基づく『銃殺指令』(1964。監督ガイ・ハミルトン)でも共同脚色を担当。
ドヌーヴより2歳年上のジュリー・クリスティもまだ現役で活躍中。最新作はカナダ映画『彼女から離れて Away From Her』(2006。監督サラ・ポーリー)でアルツハイマー病に冒される妻を演じている。 1979年、トロント生れの女優ポーリーは、『クリスマスに届いた愛』(ビデオ題。1985。監督フィリップ・ボーソス)で子役として映画デビュー。『バロン』(1989。監督テリー・ギリアム)、『エキゾチカ』(1994。監督アトム・エゴヤン)、『スウィート・ヒアアフター』(1997。監督アトム・エゴヤン)、『イグジステンズ』(1999。監督デイヴィッド・クローネンバーグ)、『死ぬまでにしたい10のこと』(2003。監督イザベル・コイシェ)、『アメリカ、家族のいる風景』(2005。監督ヴィム・ヴェンダース)、ジュリー・クリスティも出ている『あなたになら言える秘密のこと』(2005。監督イザベル・コイシェ)などで知られているが、『彼女から離れて』が長編映画初監督作。製作総指揮はアトム・エゴヤン。
『恋』は2007年1月22日に英オプティマムから
単品でDVD発売。L・P・ハートリー(1895−1972)の小説(1953)(邦訳・角川文庫、1971。
原作小説について)をハロルド・ピンターが脚色。共演は『まぼろしの市街戦』のアラン・ペイツ。
ジュリー・クリスティ主演作の『華やかな情事』(1968。監督リチャード・レスター)のDVDは、
米ワーナーから2006年6月20日発売。共演はジョージ・C・スコットとリチャード・チェンバレン。音楽はジョン・バリー。撮影は『華氏451』(1966。監督フランソワ・トリュフォー)、『遥か群衆を離れて』とクリスティ出演作を手がけたニコラス・ローグ。彼は監督作『赤い影』(1973)でクリスティを起用することになる。『赤い影』国内盤DVDはジェネオン・エンタテインメントから発売。
最後に、2006年5月5日に、フランスのゴーモンから発売された、ジョーゼフ・ロウシー監督のオペラ映画『ドン・ジョヴァンニ』(1979)の限定版豪華DVD−BOX(3枚組)の情報。ディスク1&2は、撮影監督ジェリー・フィッシャー(1926年生まれ)監修のHD修復版による本編。音声リミキシングは、ジャン=ルイ・デュカルム監修によりジャン=ポール・ルブリエがDTS96/24のドルビー2.0でエンコードした。ディスク3は特典盤。ティボー・カルテロ監督のメイキング(75分)、字幕は仏語・英語。ジャン=ピエール・ジャンセン監督のメイキング(26分)ほか収録。176頁の冊子にはロウシーの撮影覚書ほか掲載。
『ドン・ジョヴァンニ』仏盤DVDについての日本語記事
・「第26回」の追加情報
今年生誕100年を迎えるキャブ・キャロウェイ(1907年12月25日、ニューヨーク、ロチェスター生まれ)出演の『Hi-De-Ho』(1933。監督ロイ・マック)について言及したが、この映画が4月に
シネフィル・イマジカで『キャブ・キャロウェイのハイ・デ・ホー』という邦題で放映される。
また
「Hollywood Party 幻の洋画劇場」で視聴できる。
・「第10回」の追加情報
紀伊國屋書店のクリティカル・エディション・シリーズから、フリッツ・ラング監督の『ドクトル・マブゼ』2部作DVD(2枚組)が3月24日に発売された。紀伊國屋レーベル・レビューも参照していただきたいが、実質32頁の解説リーフレットについて簡単に紹介しておく。映画史家・小松弘「権力への意思「ドクトル・マブゼ」」、および映画史家・小川佐和子「原作者ノーベルト・ジャックの人物像」は、ここでしか読めない貴重な論考。また、同時発売の、伊藤大輔監督『下郎の首』DVDにも、木全公彦編集による実質42頁の解説リーフレットが封入され、やはりここでしか読めない、映画史家・佐伯知紀「一九五五年の伊藤大輔」、映画史家・田中眞澄「伊藤大輔−パトスの伝説」が掲載されている。こうした映画史を再検討する論考は、一般の映画雑誌ではなかなか読むことができない。また日本では、その種の書籍の刊行数もかなり少ない。紀伊國屋書店のDVDの場合、こうした解説への配慮は珍しいものではないが、ここであえて触れたのは、ジョナサン・ローゼンバウムの
「Global Discoveries on DVD : Perversities」を読んで改めて考えさせられたからだ。
ローゼンバウムはDVDレンタル業者
Netflixの会員のことを書いている。会員はDVD化された映画を手軽に観る恩恵にはあずかっても、ときには学術性すらもちうる特殊なDVD商品に付帯する特典の冊子、ときには書籍を参照することがないという問題だ。
日本の状況は、ある意味もっと深刻だ。しもそも、商業性の乏しい「映画」や録音物の類にかんする活字文献自体がけっして豊富に流通しているとはいえないからだ。それにたいし、たとえば、一般に読める活字資料の乏しい楽曲等を収録したレコードやCDのライナーノーツは、「文献」として収蔵・整理されてきたのか。そうしたものの書誌は存在するのか。映画に関していえば、パンフレットの類は「文献」とみなされてきたのか。そこでしか読めない貴重な文献資料の存在はどのようにして知りうるのか。
もちろんDVDの解説書の類にも同じことがいえる。DVDの場合、音声解説、特典映像などディスクそのものに収録されたデータはよいが、それ以外の商品パッケージに封入されている特典についての情報は、実際に入手してみないとわからないことが多いのではないだろうか。とくに、紀伊國屋書店のDVDは現在レンタルを行なっていないので、上記の解説リーフレットを目にする機会のある者は、商品を手に入れた者、あるいは私的なツテから借り受けることのできる者に限られる。
たとえば、せめてフリッツ・ラングの研究者、あるいはヴァイマル期のドイツ映画、大衆文化の研究者を自負するような方々には、共通の参照項として、ラング関連のDVDに付帯する冊子の類に一度は目をとおしてもらいたいとも思うのだが、まだまだ、人文系の研究者の中にもDVDの特典等にかんして無関心な方がおられるのではないかとも思う。また実際に各種データを細かく照合してみればわかるが、世界的に、映画にかんするデータには怪しいものや異同、矛盾が多く、いったん活字となって流布すると、たとえそれが間違いであっても、定着してしまう傾向がある。時代を遡るほど、事後的な検証の手立てが乏しかったことに加え、信頼のおけるデータベースがないので、関係者、専門家の書くものといえども、そのあたりのウラをとってない記述は多い。画質等に難のあるDVDといえども、映画を記述する上で有用な参考資料としての価値は無視できない。ジャーナリズムでもアカデミズムでも普通に参照され、活用されるようになってほしいものだ。
さらに、映画の「正典 canon」にかんするローゼンバウムの議論(『Essential Cinema : On the Necessity of Film Canons』、The Jonh's Hopkins University Press、2004)も示唆に富む。なぜ英語圏のアカデミズムは、「古典」「名作」といった語の代わりに「正典」なる語を好むようになったのかも知識社会学的に興味深いのだが、映画をめぐる公共的なヴォキャブラリー、カノン、リソース、アーカイヴについての再検討は他の機会に譲りたい。しかし、商業的成功作をその時代の規範的な作品とみなすことには非常に問題がある。常に流動的、暫定的な「映画史」なるものを考える際、それぞれの国(映画都市)、言語圏における「未公開作」「もはや流通していない死蔵作」「従来観られたものと異なる版」にかんする知見をどのように参照し、位置づけるべきかという課題もある。DVDはそうしたことに役立つ可能性もあるように思う。
・「第27回」の追加情報
「第27回」で紹介したオランダの映画監督フォンス・ラデマケルスが2007年2月22日、スイスの病院で亡くなったことを報告しておく。享年86。日本ではラデメーカーズの表記で知られる。1958年から1989年にかけて11本の映画を監督。第二次大戦中のナチス・ドイツ占領下のオランダで起きた一家の悲劇を描いた『追想のかなた』(ビデオ題。86)は、アカデミー外国語映画賞受賞。主演は、ポール・ヴァーホーヴェン監督の『ブラックブック』(2006)にもレジスタンスのリーダー役で出ているデレク・デ・リント。
・「第23回」の追加情報
「第23回」で告知した、米ワーナーの『フィルム・ノワール古典コレクション第4巻』が7月31日発売決定。タイトルに変更があり、『影を追う男』の代わりに『仮面の報酬』が入る。
収録作は、『暴力行為』(1948。監督フレッド・ジネマン)+『ミステリー・ストリート』(未。1950。監督ジョン・スタージェス)、『土曜日正午に襲え』(放映題。1954。監督アンドレ・ド・トス)+『死刑囚に聞け!』(1946。監督ジャック・バーナード)+『法に叛く男』(1955。監督ルイス・アレン)+『仮面の報酬』(ビデオ題。1949。監督ドン・シーゲル)、『夜の人々』(1948。監督ニコラス・レイ)+『サイド・ストリート』(未。1950。監督アンソニー・マン)、『ゼロへの逃避行』(放映題。1950。監督ジョン・ファロウ)+『緊張』(未。1950。監督ジョン・ベリー)。
貴重なタイトルが多いが、やはり一押しは、ファーリー・グレインジャー+キャシー・オドネル・コンビの2作『夜の人々』+『サイド・ストリート』。後者は日本未公開だが隠れた傑作だ。
リチャード・ベイスハート、オードリー・トッター、シド・シャリッス、バリー・サリヴァン共演の『緊張』は貴重。モノグラム・ピクチャー社の『死刑囚に聞け!』は、製作者も兼ねたジャック・バーナードの初監督作。
・「第15回」の追加情報
「第15回」でトイ・ピアノ奏者マーガレット・レン・タンの記録映画『Sorceress of the new piano』(未。2004。監督エヴァンス・チャン(陳耀成))を紹介したが、『アート・オブ・トイピアノ/マーガレット・レン・タンの世界』として
アップリンクから国内盤DVDが6月29日発売。特典映像に『The Maverick Piano』(2005。監督エヴァンス・チャン。45分)と2007年3月来日時のタン・インタヴュー収録。
・「第9回」の追加情報
アンソニー・マン監督、ジェイムズ・スチュワート主演の『雷鳴の湾』(1953)のDVDがM
スペインのスエビア・フィルムスから4月2日発売(レヴュー)。
米ユニヴァーサルから6月12日に発売される『ジェイムズ・スチュワート:スクリーン・レジェンド・コレクション』DVD−BOX(3枚組)には、『雷鳴の湾』のほか、『結婚設計図』(1936。監督エドワード・H・グリフィス)、『不時着結婚』(1948。監督ヘンリー・C・ポター)、『グレン・ミラー物語』(1954。監督アンソニー・マン)、『シェナンドー河』(1965。監督アンドルー・V・マクラグレン)が含まれる。これはジミー・ファンにとって朗報ではあるが、2003年に発売された『グレン・ミラー物語』(レヴュー)の単体盤には、タテヨコ比に問題がある。画角の上下がそれぞれ12%、13%削られている。おそらくBOX収録盤も流用だろう。正規の画角のディスク化は今後あるのだろうか。