2月13日に、米国パスポート・ヴィデオから『グロリア・スワンソン・コレクション』DVD−BOX(5枚組)が発売された。『恋愛即興詩』を除きすべて無声映画。音楽付き。リージョン・フリー。
『恋愛即興詩』を除きすべて無声映画。音楽付き。リージョン・フリー。ディスク1収録作は、『チャップリンの役者』(1915。監督チャールズ・チャップリン。32分)、『危険な娘』(未。1916。監督チャールズ・パロット=チャーリー・チェイス。男役演技指導ル・ロイ。20分) 、『雨中の逃亡』(1917。監督クラレンス・G・バジャー。25分。有名な犬のテディも出演)、『犬の計ひ』(1917。監督クラレンス・G・バジャー。20分。犬のテディ出演)。 ディスク2収録作は、セシル・B・デミル監督の『男性と女性』(1919。115分)。ディスク3収録作は、セシル・B・デミル監督の『夫を代ゆるな』(1919。60分)、『何故妻を代へる』(1920。91分)。ディスク4収録作は、セシル・B・デミル監督の『アナトール』(1921。117分)。ディスク5収録作は、『港の女(不完全版)』(1928。監督ラウル・ウォルシュ)、『恋愛即興詩』(1931。監督リオ・マケリー。81分)。『港の女』は最後の1巻が欠けた82分版で欠落部は写真で補っている。
『雨中の逃亡』は、米イメージ・エンターテインメントの『スラプスティック百科』DVD−BOX(5枚組。レヴュー)のマック・セネットのキーストン社作品を集めた第2巻に収録されている。
『雨中の逃亡』は
「Hollywood Party〜幻の洋画劇場」で視聴可。
グレートデン犬のテディはキーストン社のトップ・スターとたびたび共演したが、メアリ・ピックフォード主演の『闇に住む女』(1918。監督マーシャル・ニーラン)にも出ている。ピックフォードが一人二役を演じ、彼女の代表作に数えられる『闇に住む女』のDVDは
米マイルストンから出ている。『闇に住む女』は
「Hollywood Party〜幻の洋画劇場」で視聴可。
サンライズ・サイレンツから『グロリア・スワンソン作品集』が
DVD−Rで出ている。収録作は『雨中の逃亡』(1917。監督クラレンス・バジャー)、『危険な娘』(1916。監督クラレンス・バジャー)、『犬の計ひ』(1917。監督クラレンス・バジャー。いずれも共演はボビー・ヴァーノン)。
またグレイプヴァインからは『グロリア・スワンソン2本立て』と題し、『流砂』(未。1918。監督アルバート・パーカー)と『なぶられ者』(1924。監督アラン・ドワン)のDVD−Rが出ている。
スワンソン出演作のDVDといえば、デミル監督と離れた後にルドルフ・ヴァレンティノと共演した
『巨巌の彼方へ』(1922)のDVDが発売され話題になった。同時収録はオランダ映画博物館所蔵の『可愛い小悪魔』(1919。監督ロバート・Z・レナード)。主演は、『メリー・ウィドー』(1925。監督エリック・フォン・ストローハイム)で有名なメイ・マレイ(1889−1965)、ヴァレンティノも出演。ロバート・Z・レナードは、ホバート・ボスワースとフランク・ボーゼイジーが共演した反モルモン教映画『モルモンの少女』(1917)などメイ・マレイ出演作をいくつか監督している。
『男性と女性』(1919)のDVDはイメージ・エンターテインメントからも出ている。116分。ちなみにIVCから出ている国内盤は93分。『夫を代ゆるな』(1919)のDVDはやはりイメージから出ている。同時収録は、クレオ・リジリー、ウォレス・リード主演の『絶好の機会』(未。1915。監督セシル・B・デミル)。『何故妻を代ヘる』(1920。91分)は、ウィリアム・C・デミル監督、ロイス・ウィルソン主演『悩める花』(1921)とのカップリングでやはりイメージからDVDが出ている。アルトゥーア・シュニッツラー原作、デミル監督、ウォレス・リード主演の『アナトール』(1921。117分)のDVDもイメージから出ている。
『港の女』(1928)のDVDは
キノ・オン・ヴィデオから出ている。こちらは1987年にキノ・インターナショナルが、メアリ・ピックフォード個人蔵の唯一のプリントに基づき復元した97分。最後の欠落部は、オリジナル台本、スワンソン所蔵のスチル写真等で再現。
『港の女』の美術監督を手がけたウィリアム・キャメロン・メンジーズが亡くなったのは1957年3月5日。今年は没後50周年にあたる。監督作『来るべき世界』(1936)のDVDは紀伊國屋書店から出ている。メンジーズについては、「第9回」で紹介した『風と共に去りぬ』スペシャル・エディション(4枚組)DVDに収録の『風と共に去りぬ/幻のメイキング』も参照。第二班監督も手がけた『風と共に去りぬ』のプロダクション・デザインがあまりに見事なため、メンジーズはアルフレッド・ヒッチコック監督の渡米第2作『海外特派員』(1940)で特殊製作効果を担当することになる。『海外特派員』の紀伊國屋書店盤DVD封入の解説リーフレットをも参照。
スワンソンについては『グロリア・スワンソン自伝』(文藝春秋、1994)を参照。
デミルについてはロバート・S・バーチャード著
『セシル・B・デミルのハリウッド』(ケンタッキー大学出版、2004)、スミコ・ヒガシ著
『セシル・B・デミルとアメリカ文化:無声期』(カリフォーニア大学出版、1994)を参照。
グロリア・スワンソン・ファン・サイト
デミル初期監督作の予算と収益
デミルは第一次世界大戦後の1919年の『男性と女性』から、有閑階級の新たな性道徳を扱う風俗映画を撮り続けたが、『アダムズ・リブ』(未。1923)の後、映画界の自主規制の時流に合わせるかのように、道徳的映画へと転向、聖書に基づく歴史大作『十誡』(1923)を撮る。デミルに代わり洗練された性的喜劇の巨匠となるのが、1922年にハリウッドに招かれた『結婚哲学』(1924)のエルンスト・ルービッチュである。1923年11月23日公開の『十誡』と1924年2月3日公開の『結婚哲学』の間に、興行的には失敗したものの、ハリウッド史上きわめて重要な大作『グリード』(1924。監督エリック・フォン・ストローハイム)が1924年12月4日に公開されている。
ところで『男性と女性』、『何故妻を代へる』、『アナトール』には、いずれもビービー・ダニエルズが出ている。ビービー・ダニエルズは1901年1月14日、テキサス州ダラス生まれ。本名フィリス・ダニエルズ。子供の頃、一家がカリフォーニア州に移住、8歳で映画に出演した。
ビービー・ダニエルズについて
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silentsaregolden.com
ビービー・ダニエルズはハロルド・ロイドの初期短編100本以上に出ているが、米ニュー・ラインから出た『ハロルド・ロイド喜劇選』DVD−BOXには、ビービー・ダニエルズ出演作として、第一巻に『Ask Father』(1919)、第二巻に『Billy Blazes, Esq.』(1919)と『Bumping into Broadway』(1919)が収録されている(邦題不詳)。
製作・主演ダグラス・フェアバンクス、エドマンド・グールディング監督の『月世界征服』(1930)のDVDは、米パスポートから2006年3月7日発売。ただし画質は悪く62分の短縮版(本来は72分)。セット美術はウィリアム・キャメロン・メンジース。ビング・クロスビーが歌手役で映画初出演。ロイド・ベイコン監督、ウォーナー・バクスター主演の『四十二番街』(1933)のDVDは米ワーナーから発売されている。ジョージ・ブレント、ルビー・キーラー、ガイ・キービー、ウナ・マーケル、ジンジャー・ロジャース、ネッド・スパークス、ディック・パウエルら出演。振り付けはバズビー・バークリー。『バズビー・バークリー・コレクション』DVD−BOX(6枚組。レヴュー
dvdtalk.com /
dvdtimes.co.uk)も米ワーナーから2006年3月21日に出た。収録作は、『四十二番街』、『ゴールド・ディガース』(1933。監督マーヴィン・ルロイ)、『フットライト・パレード』(1933。監督ロイド・ベイコン)、『泥酔夢』(1934。監督レイ・エンライト、バズビー・バークリー)、『ゴールド・ディガース36年』(1935。監督バズビー・バークリー)、特典ディスク「バズビー・バークリー・ディスク」にはワーナーの9作品からの21の完全なナンバーを収録。ウィリアム・ワイラー監督、ジョン・バリモア主演の『巨人登場』(1933)のDVDは
米キノ・オン・ヴィデオから出ている。
ビービー・ダニエルズ主演のパラマウント調冒険喜劇『娘十八冒険時代』(1928)のDVDはグレイプヴァインから出ている。監督は奇人喜劇のヒット作『襤褸と宝石』(1936)のグレゴリー・ラ・カヴァ。
米ワーナー社から2006年9月12日に『マルタの鷹』特別盤(3枚組)が発売された。1941年のジョン・ヒューストン監督版の新マスター版(ボガートの伝記作家エリック・ラックスの音声解説付き)はもちろん、『マルタの鷹』の最初の映画版(1931)を収録。これはビービー・ダニエルズとリカルド・コルテス共演の貴重な作品。同じディスク2には『マルタの鷹』二度目の映画化作品、ウィリアム・ディターレ監督、ベット・デイヴィスとウォレン・ウィリアムズ共演の『悪魔が淑女と出会った』(未。1936)も収録。後者ではサム・スペイドはテッド・シェインという弁護士に代えられている。さらにディスク3には、新たに作られたドキュメンタリー『マルタの鷹:一羽の見事な鳥』、ボガート作品予告編集、1941年の撮影所NG,秘蔵映像集を収録。
『マルタの鷹』特別版(レヴュー)は単体で発売されたほか、『ハンフリー・ボガート・シグネチャー・コレクション第2巻』DVD−BOXに収録。他の収録作は、太平洋戦争を予言したと言われるジョン・ヒューストン監督の『太平洋をこえて』(未。1942。共演は『マルタの鷹』のメアリ・アスター、シドニー・グリーンストリート)、ロイド・ベイコン監督の『北大西洋』(1942)、ヴィンセント・シャーマン監督の反ナチ映画『一晩中』 (未。1942)、マイケル・カーティーズ監督、ジェイムズ・ウォン・ハウ撮影の『渡洋爆撃隊』(1944)。どれもオリジナル・キャメラ・ネガティヴからデジタル・リマスターされた素材。それぞれ特典映像付き。
2005年にワーナーから国内盤が発売された
『オズの魔法使』コレクターズ・エディションDVD(3枚組。初回限定生産。
米ワーナー公式)のディスク3には、L・フランク・ボームの小説『オズの素敵な魔法使』(1900)の初の映画化となる1910年版の『オズの素敵な魔法使 The Wonderful Wizard of Oz』(13分。20fps)が収録されている。 脚本・監督はオーティス・ターナー(1862−1918)。ドロシー・ゲイル役はビービー・ダニエルズ、魔法使役はホバート・ボスワース、カカシ役はロバート・Z・レナード。ボスワースは『ビッグ・パレード』(1925。監督キング・ヴィドア)や『山の王者』(1929。監督エルンスト・ルービッチュ)で有名だが、『周遊する蒸気船』(1935。監督ジョン・フォード)の牧師役。レナードは1908年から1917年まで映画俳優として活躍したが、1913年より監督も始め、後に『巨星ジーグフェルド』(1936)、『美人劇場』(1940)などの監督として有名になる。『巨巌の彼方へ』(1922)DVDに同時収録された『可愛い小悪魔』(1919)などのメイ・マレイ主演作もいくつか監督している。同じディスクには『The Magic Cloak of Oz』(1914)、『オズのカカシ男 His Majesty, The Scarecrow in Oz』(1914)、ラリー・シーモン監督・主演、ドロシー役をドロシー・ドワン(1906−81)が演じた、1925年版の初の長編『オズの魔法使』(邦題『笑国万歳』)、1933年の短編アニメ『オズの魔法使』なども収録。
『オズの魔法使』
DVD比較 /
レヴュー /
1999年版トランスファーと2005年版(2枚組および3枚組)トランスファーの比較
なお稲垣足穂(1900−77)はラリー・シーモン(1889−1928)のファンだったことが知られている。ドロシー・ドワンはタルホの挙げている『Her Boy Friend』(邦題不詳。1924)、『百鬼乱暴』(1925)、『ラリー将軍珍戦記』(1927)でもシーモンと共演している。2004年にドイツの
ZYXから『ザ・ヴェリー・ベスト・オヴ・ラリー・シーモン』というDVDが出ている。音声はドイツ語。80年代のTVシリーズ『Klamottenkiste』の一編。他にチャーリー・チャップリン編、ファッティ・アーバックル編、ビリー・ビーヴァン編、人気スラップスティック役者編があり、5枚組のBOXも発売。ラリー・シーモン編の収録作は 『Scamps and Scandals』(1919)、『The Fly Cop』(1920)、『The Gown Shop』(1923)、『Dunces and Dangers』(1918)、『The Star Boader』(1919)、『His Home Sweet Home』(1919)、『The Cloudhopper』(1925)、『The Stunt Man』(1927)、『The Rent Collector』(1921)。邦題不詳。
16ミリ・フィルムに基づき私家版DVD−Rを発売しているグレイプヴァイン・ヴィデオからは『ラリー・シーモン』第1巻、第2巻が出ている。第1巻収録作は『Dunces and Dangers』(1918)、『The Bell Hop』(1921)、『The Sawmill』(1922)、『Kid Speed』(1924)、『The Stunt Man』(1927)。第2巻収録作は『Risk and Roughnecks』(1917)、『Well I'll Be』(1919)、『The Sleuth』(1922)、『Her Boyfriend』(1924)、『Dome Doctor』(1925)、『The Cloudhopper』(1925)。
米イメージ・エンターテインメントの『スラプスティック百科』DVD−BOX(5枚組)の第10巻にラリー・シーモンの『The Clocery Clerk』(1920)が収録されている。
ラリー・シーモンの『ラリー・シモンのハチャメチャ店員 The Glocery Clerk』は
「Hollywood Party〜幻の洋画劇場」で視聴可。
ラリー・シーモン作品解説(日本語)
タルホ作品に登場するラリーの映画
1910年版の『オズの素敵な魔法使』は、2004年に米イメージ・エンターテインメントから出て世界中で話題になったDVD−BOX『More Treasures from American Film Archives』(3枚組。 / 。
レヴュー)にも収録されている。
・「第9回」の追加情報
アンソニー・マン監督の遺作となった英国スパイ映画『殺しのダンディ』(1968)のDVDが各国のソニー・ピクチャーズから出る。
英国盤は3月5日発売。ドイツ盤は3月6日発売。スペイン盤は3月13日発売。デンマーク盤は3月27日発売。音声は英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、字幕は英語、ポルトガル語、アラビア語、デンマーク語、フィンランド語、ヒンドゥー語、ノルウェイ語、ルーマニア語、スウェーデン語、トルコ語。103分。
昔出ていた国内版ビデオはトリミング版だったが、これらのDVDはもちろん2.35:1。
撮影途中でマンが交通事故で亡くなり、主演のローレンス・ハーヴェイが残りを演出した怪作。音楽はクインシー・ジョーンズ。ロケ地のベルリンでマンが亡くなったのは、1967年4月29日、今年は没後40年を迎える。
なお、フランク・シナトラとローレンス・ハーヴェイ出演の『影なき狙撃者』(1962。監督ジョン・フランケンハイマー)の国内盤DVDは、1月19日に初回限定生産で999円盤が出た。フランク・シナトラと結婚していたミア・ファロウは、この後、初主演作となったロマン・ポランスキ監督の『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)撮影中に離婚。彼女がシナトラと結婚したのは、1966年7月19日、彼女は21歳、シナトラは50歳だった。彼女は人気TVシリーズ『ペイトン・プレイス物語』(1964−69)のアリソン役で有名になったのだが、同番組の共演者が、最近息子に向け銃を発砲し、話題になったライアン・オニール。1968年初めにビートルズ、ドノヴァン、マイク・ラヴ、ミアの姉プルーデンス・ファロウらも参加した、インド北部のリシケシュの修行場で導師マハリシ・マヘシ・ヨギ(1917年生まれ)の超越瞑想セミナーに参加したのは有名。ジョン・レノンは瞑想室でのマハリシのミアにたいするセクハラ疑惑により、マハリシから離れた。ともあれ、どこか天然のミアちゃんは、不思議ちゃん系の元祖といえる。ジョーゼフ・ロウシー監督、エリザベス・テイラー、ミア・ファロウ、ロバート・ミッチャム出演の英国映画『秘密の儀式』(1968。レヴュー)のDVDは英ユニヴァーサルから2006年5月15日に出た。ダスティン・ホフマンとミア・ファロウの共演作『ジョンとメリー』(1969。監督ピーター・イエイツ)のDVDは米フォックスから3月6日発売。リチャード・フライシャー監督、ミア・ファロウ主演の『見えない恐怖』(1971)のDVDは、英米のコロンビア・トライスターから出ていたが廃盤。
シナトラとの離婚から2年後の1970年、今度はアンドレ・プレヴィンと結婚。プレヴィンとは1979年に離婚、その後ウディ・アレンと長く付き合い、一子をもうけたが、韓国生まれの養女スンイー・プレヴィン(1970年生まれ)が13歳の頃から、35歳年上のアレンと関係をもったことがアパートにあった6枚のスンイーのヌード・ポラロイド写真からわかり、破局。なおスンイーは『ハンナとその姉妹』(1986)にクレジットなしで登場する。アレンは7歳の養女ディランにも性的いたずらをしていたとミアは主張した(
アレンの小児性愛について)。もっとも結局おとがめはなく、アレンとスンイーは1997年12月24日、ヴェネツィアで挙式した。彼らには二人の養子がいる。
ミアの実子は4人だが、養子は10人。養子の一人タム・ファロウ(1979年生まれ)は2000年に病死した。ミア・ファロウについては『ミア・ファロー自伝−去りゆくものたち』(集英社、1998)を参照。ミア・ファロウは映画版『サウンド・オブ・ミュージック』(1965。監督ロバート・ワイズ)の16歳の長女リーゼル役のスクリーン・テストを受けたが、そのフッテージは40周年記念版のDVD『サウンド・オブ・ミュージック<ファミリー・バージョン>』(初回限定生産)の豪華特典ディスクに収録されている。ちなみに『サウンド・オブ・ミュージック』でリーゼル役を演じたのは
シャーミアン・カー(1942年生まれ)だが、新録音日本語吹替では華原朋美がアテている。シャーミアン・カーは『サウンド・オブ・ミュージック』の製作背景を綴ったジーン・ストロースとの共著『リーゼルよ永遠に』(2000)、またファンや読者の反響に応えた『リーゼルへの手紙』(2001)を出している。
なおアンソニー・マン監督の傑作戦争映画『最前線』がロサンゼルスで世界プレミア上映されたのが1957年1月25日。アメリカで公開されたのは、1957年3月19日。今年でちょうど50周年を迎える。『最前線』はアンソニー・マン生誕100年にあたる昨年、紀伊國屋書店からDVDが発売されているが、あまり知られていないようだ。既にご覧の方にも、また未見の方には、マン没後40年、公開50周年のこの機会にぜひとも観ていただきたい。朝鮮戦争初期の小隊の行軍と戦闘を扱った緊密かつ鮮烈な美しいモノクロ映画である。抜粋映像はこのサイトで観られる。ジェイムズ・スチュワート主演、ロバート・ライアン共演の西部劇『裸の拍車』(1953)同様、全編が野外で展開するため、舞台装置らしきものは、攻略対象の丘のトーチカ2基くらい。だからこそ逆説的に、生身の人間が浮き彫りにされる純粋な空間が出現する。「第9回」にも書いたように、ロケ地の
ブロンソン・キャニオンは『捜索者』(1956。監督ジョン・フォード)、『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(DVD題。監督ドン・シーゲル)、『昼下がりの決斗』(1962。監督サム・ペキンパー)などでおなじみ。
こうしたミニマルなプロダクション・デザインにふさわしく、美術監督は、『たそがれの恋』(放映題。1945。監督アンソニー・マン)、『犯罪王ディリンジャ』(1945。監督マックス・ノセック)、『パリの醜聞』(未。監督ダグラス・サーク)、『夜の恐怖』(未。1947。監督マックスウェル・シェイン)、『ギャングスター』(未。1947。監督ゴードン・ワイルズ)、『ムコ捜し大騒動』(放映題。1948。監督リチャード・フライシャー)、『野望の果て』(放映題。1948。監督エドガー・G・ウルマー)、『魅せられて』(DVD題。1949。監督マックス・オフュルス)、『アリゾナの男爵』(未。1950。監督サミュエル・フラー)、『南部に轟く太鼓』(1951。監督ウィリアム・キャメロン・メンジーズ)、『ゴリラの花嫁』(未。1951。監督カート・シオドマク)、『ギャングを狙う男』(1953。監督フィル・カールソン)、『三人の狙撃者』(1954。監督ルイス・アレン)などのフランク・ポール・サイロス(1900−76)。マックス・オフュルスは、3月25日に没後50周年を迎えるので、この際、あわせて「第11回」で紹介した『魅せられて』も観ていただきたい。抜粋映像はこのサイトで観られる。オフュルスのもう1本のフィルム・ノワール『レックレス・モメント/愛と欲望の罠』(放映題。1949。
英盤DVDレヴュー)の国内盤DVDも出してもらいたいのだが。
これも主演はジェイムズ・メイソン。共演は『扉の影の秘密』のジョーン・ベネット。美術は『ララミーから来た男』(1955。監督アンソニー・マン)、『コルドラへの道』(1959。監督ロバート・ロッセン)のキャリー・オデル(1910−88)。装飾は『馬上の男』(DVD題。1951。監督アンドレ・ド・トス)、『叛逆の用心棒』(DVD題。1953。監督アンドレ・ド・トス)、『捨身の一撃』(1955。監督ジョーゼフ・H・ルイス)、『第7騎兵隊』(放映題。1956。監督ジョーゼフ・H・ルイス)、『反撃の銃弾』(1957。監督バッド・ベティカー。
レヴュー)、『日暮れ時の決断』(未。1957。監督バッド・ベティカー)、『ブキャナンひとり馬を駆る』(未。1958。監督バッド・ベティカー)、『ひとり寂しく馬を駆る』(未。1959。監督バッド・ベティカー)、『決闘コマンチ砦』(1960。監督バッド・ベティカー)などのランドルフ・スコット西部劇でおなじみのフランク・タトル(1905−69)。ランドルフ・スコットが亡くなったのは1987年3月2日。今年は没後20周年。ちなみに、エルモア・レナード原作、バート・ケネディ脚本の『反撃の銃弾』のアメリカ・プレミア上映は1957年4月1日、今年は50周年にあたる。この機会に見てもらいたいが、残念ながらDVDにはなっていない。
・「第1回」の追加情報
ニコラス・レイ監督の日本未公開作『熱い血』(1956)のDVDが英ソニー・ピクチャーズから3月26日発売。
主演はジェイン・ラッセルとコーネル・ワイルド。音楽は『アッシャー家の惨劇』(1960。監督ロジャー・コーマン)、『血ぬられた墓標』米国公開版(1960。監督マリオ・バーヴァ)、『ビキニマシン』(1965。監督ノーマン・タウログ。主題歌"Dr. Goldfoot and His Bikini Machine"を歌うのは『ドリームガールズ』の元ネタになったスプリームズ)の
レス・バクスター。
美術は『暗黒への転落』(1949。監督ニコラス・レイ)、『孤独な場所で』(1950。監督ニコラス・レイ)、『復讐は俺に任せろ』(1953。監督フリッツ・ラング)、『仕組まれた罠』(DVD題。1954。監督フリッツ・ラング)、ベティカー西部劇などのロバート・ピーターソン。装飾はベティカー西部劇などのフランク・タトル。
ところで残念なことに、「第1回」で紹介した英国ユリイカ/マスターズ・オヴ・シネマから出た『バレン』(1960)のDVDが権利問題により廃盤、流通在庫も回収されてしまった。ユリイカ盤はスペインのスエビア盤DVDより10分長い上、2.35:1収録だが、英ITVから2007年1月15日発売の『バレン』は不完全版の上、1.33:1収録。詳しくは
レヴューを参照。
・「第5回」の追加情報
サミュエル・フラー監督の『地獄と高潮』(1954)のDVDが米20世紀フォックス社から5月22日発売。「第24回」で報告済みだが、『折れた銃剣』(放映題。1951)のDVD発売は4月24日。
『地獄と高潮』はポーランド出身の女優ベラ・ダルヴィ(1928−71)の映画デビュー作だが、彼女の出演作には、第2作の『エジプト人』(1954。監督マイケル・カーティーズ、主演ジーン・シモンズ、ヴィクター・マチュア、ジーン・ティアニー)のほか、「第8回」で紹介した、エディ・コンスタンティーヌ主演の『俺は感傷的な男』(未。1955。監督ベルナール・ボルドリー)や、シャルル・ヴァネル主演の『情報(ネタ)は俺が貰った』(1958。監督ベルナール・ボルドリー)などのフランス映画や、「第10回」で紹介したイタリア映画『くち紅』(1960。監督ダミアーノ・ダミアーニ)などがある。ダルヴィはフォックス社のプロデューサー、ダリル・F・ザナックを魅了した上、バイセクシャルだったことでも知られる。
『情報は俺が貰った』のDVDは東北新社から出ている