ダン・ドゥリエイは、ダン・ドゥリエ、ダン・デュリエなどの日本語表記で知られる立川談志師匠もひいきにする性格俳優。1907年1月23日生まれなので今年は生誕100年にあたる。ダン・ドゥリエイ主演の映画はすべて日本未公開だが、とりわけ「第18回」で紹介した、コーネル・ウルリッチ原作、ロイ・ウィリアム・ニール製作・監督の『黒い天使』(未。1946)は有名。台本、セット美術、撮影、演技もどれも低予算ながら素晴らしい。特にブロンドのB級女優ジューン・ヴィンセント(1920年、オハイオ州ハロッズ生まれ)は魅力的。彼女の歌も聴ける。
殺される人気歌手役のコンスタンス・ダウリング(1920−69)は、ダニー・ケイのデビュー作『ダニー・ケイの新兵さん』(1943)に出ている。既婚者のエリア・カザンと交際していたこともあるが、1950年にイタリアの作家チェーザレ・パヴェーゼ(1908−50)が自殺する直前に付き合っていたが彼を振ったことで知られる。彼の最後の10篇の詩群「死が訪れ君の眼を持つだろう」は彼女に捧げられている。『失われた週末』(1945)、『青い戦慄』(1946)に出演している妹のドリス・ダウリング(1923−2004)と共に、1947年にローマに移住し、イタリアに活動拠点を移した初のハリウッド女優となった。パヴェーゼと知り合ったのは1950年のローマでの新年パーティ。パヴェーゼはコンスタンス姉妹のためにいくつかの映画の原案を書いた。ドリスはイタリア映画の名作『にがい米』(1949。監督ジュゼッペ・デ・サンティス)でヴィットリオ・ガスマン、シルヴァーナ・マンガノと共演している。また『オーソン・ウェルズのオセロ』(1952)では娼婦ビアンカ役を演じている。
コーネル・ウルリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)原作の40年代映画には、他に以下がある。『チャンスの街』(未。1942。監督ジャック・ハイヴリー、原作『黒いカーテン』)、『レオパルド・マン』(DVD題。1943。監督ジャック・ターナー、原作『黒いアリバイ』)、『幻の女』(1944。監督ロバート・シオドマク)、『口笛男の痕跡』(未。1944。監督ウィリアム・キャッスル、原作『睡眠口座』)、『タイムリミット25時』(ビデオ題。1946。監督ハロルド・クラーマン、原作『暁の死線』)、『追跡』(未。1946。監督アーサー・リプレイ、原作『恐怖の冥路』)、『カモ』(未。1947。監督レジナルド・ル・ボーグ、原作『コカイン』)、『有罪』(未。1947。監督ジョン・ラインハート、原作『殺しのにおいがする』)、『夜の恐怖』(未。1947。監督マックスウェル・シェイン、原作『悪夢』)、『口笛男の帰還』(未。1948。監督D・ロス・レダーマン、原作『突然アリスは消えた』)、『靴』(未。1948。監督ウィリアム・ナイ)、『夜は千の眼を持つ』(1948。監督ジョン・ファロウ)、『窓』(1949。監督テッド・テズラフ、原作『非常階段』)。このうち最大のヒット作『窓』の
DVDがフランスのエディシオン・モンパルナスから2006年10月2日に出た。監督のテズラフはミリアム・ホプキンスの撮影監督として知られ、彼女の当たり役となった『襤褸と宝石』(1936)の撮影監督などを務めている。
紀伊國屋書店から2月24日にDVDが出る『M』(1931。監督フリッツ・ラング)のシーモア・ネーベンツァル製作、フィリップ・ヨーダン脚本、ロバート・カミングス、ペーター・ロレ主演の『追跡』はVCIから『死後の私を葬って』(未。1947。監督バーナード・ヴォーハウス)と共に『フィルム・ノワール2本立て、第2巻』と題するDVDが出ている。『追跡』は今も観賞に耐えるカルト的秀作だが、『死後の私を葬って』はジョン・オルトンの撮影ながらやや冗漫。ちなみに『フィルム・ノワール2本立て、第1巻』は、『足をひきずる男』(未。1953。監督サイ・エンドフィールド)と『うつろな勝利』(未。1948。監督スティーヴ・シークリー、撮影ジョン・オルトン)を収録。『うつろな勝利』はポール・ヘンリードと『扉の影の秘密』(1948。監督フリッツ・ラング)のジョーン・ベネット。『追跡』のDVDは
アルファ・ヴィデオからも出ている。
アルファからは
『夜の恐怖』のDVDも出ている。これは『スタートレック』シリーズのドクター・マッコイ役で知られるデフォレスト・ケリーの映画初出演作。監督のマックスウェル・シェインはこの映画を『悪夢の殺人者』(放映題。1956)としてリメイク。リメイク版の主演はエドワード・G・ロビンソンとケヴィン・マッカーシー。撮影はジョーゼフ・バイロック。
コーネル・ウルリッチの小説とフィルム・ノワールに関してはトマス・C・レンツィ著『パルプ・フィクションからフィルム・ノワールまでのコーネル・ウルリッチ』(McFarland,2006)を参照。
高名な映画批評家アンドルー・サリスは『黒い天使』をお気に入りの犯罪ミステリ映画10選に入れている。
アンドルー・サリスのお気に入りの犯罪ミステリ映画10選(原題アルファベット順)
『シャーロック・ホームズの冒険』(未。1939。監督アルフレッド・L・ワーカー)
『そして誰もいなくなった』(1945。監督ルネ・クレール)
『黒い天使』(未。1946。監督ロイ・ウィリアム・ニール)
『チャイナタウン』(1974。監督ロマン・ポランスキ)
『青の恐怖』(1946。監督シドニー・ギリアット)
『ローラ殺人事件』(1944。監督オトー・プレミンジャー)
『マルタの鷹』(1941。監督ジョン・ヒューストン)
『舞台恐怖症』(1950。監督アルフレッド・ヒッチコック)
『影なき男』(1934。監督W・S・ヴァン・ダイク)
『トワイライト』(ビデオ題。1998。監督ロバート・ベントン)
『黒い天使』米ユニヴァーサル盤DVD (レヴュー
dvdbeaver.com /
dvdtalk.com)
マーティン・ブレア(ダン・ドゥリエイ)はロサンゼルス、ウィルシャー大通りの高級コンドミニアム、ウィルシャー・ハウスに住む妻の人気歌手マーヴィス・マーロウ(コンスタンス・ダウリング)に会ってもらえず、メッセンジャー・ボーイにハート型のブローチを届けさせ、建物の前で待っている。マーヴィスはドアマンに電話でマーヴィスとは会わないと指示し、彼を追い返させる。呼び鈴が鳴ると、彼女はメイドに隠れて拳銃を取り出す。誰かを待っているようだ。マーヴィスに会いに来た別の男(ペーター・ロレ)は中に入れてもらえる。自暴自棄になって酔っ払い、安酒場でピアノを弾くマーティを友人のジョーが迎えに来て部屋まで送り届け、これ以上飲み歩かないように、外から扉にかんぬきを掛ける。夜10時だ。
12時15分、カーク・ベネット(ジョン・フィリップス)は鍵の掛かっていないマーヴィスの部屋に入る。彼女の歌う「Heartbreak (失恋)」のレコードが掛かっている。物音を聞き、彼女の寝室に入ったカークは彼女が床に倒れ、死んでいるのを見つけ、彼女の頭文字MMの入ったスカーフに触れ、傍らの拳銃を手に取る。彼は警察に電話しようとするが寝室の方から物音がするので様子を見に行くと、誰かが出て行ったようだ。ハートのブローチがなくなっている。彼が犯人を追って廊下に出ると自動的に扉に鍵が掛かり、彼は部屋を閉め出される。カークは階段で逃げ帰る際、ちょうど戻ってきたマーヴィスのメイドに顔を見られる。
殺人課のフラッド警部(ブロデリック・クロフォード)ともう一人の刑事がベネット宅にベネット夫人で元歌手のキャシー(ジューン・ヴィンセント)を訪ね、部屋に入る。フラッド警部はキャシーにカークがマーロウ殺害の容疑者だと話す。そこへベネットが帰ってくる。彼は容疑を否認するが、警察に連行される。早朝の取調べで、カークはマーヴィスにゆすられていたことを認める。証拠の拳銃には彼の指紋が付いている。死因はスカーフによる絞殺だ。カークはブローチの話をするが刑事たちは信じない。
やがてカークの裁判が始まり、彼は無実を訴えるが死刑判決を受ける。夫の無実を確信するキャシーはフラッド警部に再捜査を頼むが警部は取り合わない。求職中のキャシーは「Heartbreak」の作詞作曲者でもあるマーティン・ブレアの噂を立ち聞きし、彼の居所を聞き出す。彼女は昼間も寝ているマーティンの部屋を訪ね、彼を起こし、マーヴィスのことを尋ねる。マーティンが事件当夜、建物の前にいたと聞いたキャシーは彼が犯人ではと疑うが彼は否定する。そこにジョーが現れ、夜10時に泥酔したマーティを部屋に閉じ込め、外からかんぬきを掛けたとキャシーに言う。気がとがめた彼女は、マーティンに黙って、紙幣を残して去る。
気位の高いマーティンは翌日、キャシーにカネを返しに行く。カークの写真を見たマーティンは自分が事件当夜に見たのは別の男だと言う。キャシーとマーティンは一緒にカークに面会し、ブローチのことを尋ねる。マーティンによると、それは結婚の際に彼がマーヴィスに贈ったもので、事件当日は結婚記念日だった。
やがてカークの所持品がキャシー宅に届けられる。マーティンとキャシーはそこにあった紙マッチにマーヴィスの手書きで電話番号が記されていることに気づく。彼らはそこに電話し、サンセット・ストリップのリオのナイトクラブだと突き止める。電話を受けた店のオーナーは、マーティンが事件当夜に見かけた例の男、マーコ氏だ。店に行き、マーコ氏の存在を知ったマーティンとキャシーは次の月曜、「カーヴァー&マーティン」の偽名でリオのクラブの出し物のオーディションを受け、マーコに気に入られ採用される。マーティンはマーコの事務室でマーヴィスの頭文字MMと記された封書が金庫にしまわれるのを見る。キャシーのピアノ伴奏者となったマーティンは酒をやめ、キャシーのために「Time Will Tell(時が分からせてくれる)」を書き下ろす。
彼らの歌は地元紙で評判になる。マーヴィスはキャシーに惹かれるが、キャシーはやがてマーコから金庫にしまってあった星型ブローチを贈られる。暗証番号を盗み見たキャシーは隙を見て金庫を開け、マーヴィスがマーコに宛てた手紙を読む。彼の娘の結婚相手にマーコの前科をバラすという脅迫状だ。だがマーコはキャシーがベネット夫人だと知っていた。ここから思いがけない事件の真相が明らかにされていく。
ダン・ドゥリエイのもう1本のLAノワール『涙は手遅れ』(未。1949。監督バイロン・ハスキン)も悪女ものノワールのファンは必見。主演のリザベス・スコットが極めつけの悪女を演じ、彼女の最高作とも言われる。監督のバイロン・ハスキンは、バート・ランカスター、リザベス・スコット、カーク・ダグラス共演、『涙は手遅れ』にも出ているクリスティン・ミラーも出ているフィルム・ノワール『暗黒街の復讐』(放映題。1948)の監督もしている。
ちなみにカーク・ダグラスのデビュー作は、バーバラ・スタンウィック、ヴァン・ヘフリン主演、リザベス・スコットも出ているフィルム・ノワール『呪いの血』(DVD題。1946。監督ルイス・マイスルトン)で、第2作がロバート・ミッチャム主演のフィルム・ノワール『過去を逃れて』(DVD題。1947。監督ジャック・ターナー)である。またバート・ランカスターのデビュー作はフィルム・ノワール『殺人者』(1946。監督ロバート・シオドマク)で、第2作はフィルム・ノワール『真昼の暴動』(1947。監督ジュールズ・ダッシン)、第3作はA・I・ベゼリデスとロバート・ロッセンが脚本を手がけた、ジョン・ホディアク、リザベス・スコット主演、クリスティン・ミラーも出ているテクニカラー・ノワール『砂漠の怒り』(放映題。1947。監督ルイス・アレン)である。『涙は手遅れ』の製作はハント・ストロンバーグ(1894−1968)。1920年代から映画製作を手がけている彼は、第17回で紹介したヘディ・ラマー主演の『奇妙な女』(未。1947。監督エドガー・G・ウルマー)、『不名誉な淑女』(未。1947。監督ロバート・スティーヴンソン)の製作総指揮者でもある。テンポの早い急展開のプロットの原案・脚本は『殺人者はバッヂをつけていた』(1954)のロイ・ハギンズ。TVシリーズ『逃亡者』(1963−67)の企画者として有名。
撮影のウィリアム・メラーは、『明日は来らず』(1937)、『シンガポール珍道中』(1940)、『偉大なマッギンティ』(放映題。1940)、『陽のあたる場所』(1951)、『裸の拍車』(1953)、『ビッグ・リーガー』(未。1953)、『日本人の勲章』(1955)、『シャロンの屠殺者』(1955)、『ジャイアンツ』(1956)、『昼下がりの情事』(1957)、『アンネの日記』(1959)、『強迫/ロープ殺人事件』(放映題。1959)、『鏡の中の犯罪』(放映題。1960)などの撮影で知られる。『涙は手遅れ』のパブリック・ドメインのDVDはいくつか出ているが画質はあまりよくない。特別版と銘打ったイメージ・エンターテインメント盤DVD(
レヴュー)でさえ、夜間場面のほとんどがつぶれて見えない上、フィルム飛びもあり、音声不良箇所もあるため、情景や話の不明瞭な箇所がある。アルファ・ヴィデオ盤も同様。イメージ盤DVDには、「第23回」の追加情報でも紹介したエディ・ムラーによるヴィデオ・エッセイ『ダン・ドゥリエイ:レイディ・キラー』(2003)と『リザベス・スコット:ファム・ファタル』(2003)が付いている。またスチル写真の画像もいくつか収録されており、それを見るとオリジナルの画面の画質がうかがえる。
クエスター・ホーム・ヴィデオの
『5本のフィルム・ノワール殺人者古典集』(6枚組)に収録の『涙は手遅れ』(リイシュー題の『Killer Bait』名義)は、イメージ盤より画質がよい。他の収録作は『都会の牙』(1949。監督ルドルフ・マテ)、『まわり道』(未。1945。監督エドガー・G・ウルマー)、『ストレンジャー』(DVD題。1946。監督オーソン・ウェルズ)、『緋色の街〜スカーレット・ストリート』(放映題。1945。監督フリッツ・ラング)。特典ディスクには35本のフィルム・ノワール予告編ほかを収録。
フィルム・ノワール・ファウンデーション創設者
エディ・ムラーのインタヴュー(フィルム・ノワール作品保存の問題点などについて)
フィルム・ノワール・ファウンデーション提供の世界最大のフィルム・ノワール映画祭
「ノワール・シティ」第5回はサンフランシスコで1月26日から2月4日まで開催。今回の特別ゲスト・スターは『カーネギー・ホール』(1947。監督エドガー・G・ウルマー)や『ひどい仕打ち』(未。1948。監督アンソニー・マン)などのブラックリスト女優マーシャ・ハント(1917年、シカゴ生まれ)。『ジョニーは戦場に行った』(1971。監督ドルトン・トランボ)の主人公の母親役。『ひどい仕打ち』に加え、彼女がヴァン・ヘフリンと共演した超レアなフレッド・ジネマンの監督デビュー作『上品な殺人者』(未。1942)の上映あり。
今回の他の上映作は以下の通り。
『犯人を逃すな』(放映題。1951。監督ロバート・パリッシュ)、『見捨てられて』(未。1949。監督ジョーゼフ・M・ニューマン)、『ギャングを狙う男』(1953。監督フィル・カールソン)、『ハワイ犯罪地図』(1954。監督ジョン・H・オウア)、『脅迫』(未。1949。監督フィリクス・ファイスト)、『路上封鎖』(未。1951。監督ハロルド・ダニエルズ)、『ハメられて』(未。監督リチャード・ウォレス、脚本ベン・マドウ)、『醜聞(スキャンダル)殺人事件』(1952。監督ヴィンセント・シャーマン)、『私はトラブルが好き』(未。1948。監督シルヴァン・サイモン、脚本ロイ・ハギンズ)、『殺人者はバッヂをつけていた』(1954。監督リチャード・クワイン、脚本ロイ・ハギンズ)、『緋色の街〜スカーレット・ストリート』(放映題。1945。監督フリッツ・ラング)、『悪女』(未。1953。監督ラッセル・ラウズ)、『ビッグ・コンボ』(DVD題。公開題『暴力団』。1955。監督ジョーゼフ・H・ルイス)、『霊界魔人ミスターX』(放映題。1948。監督バーナード・ヴォーハウス)、『暗黒街の復讐』(放映題。1948。監督バイロン・ハスキン)、『暴れ者』(1948。監督ノーマン・フォスター)、『悪党は泣かない』(放映題。1950。監督ヴィンセント・シャーマン)、『失われた心』(1947。監督カーティス・バーンハート)。
『涙は手遅れ』あらすじ(以下、ネタバレあり)
夜、一台のコンヴァティブルが道の脇に停車し運転手が腕時計を見る。8時半だ。ハリウッド・ヒルズのパーティに出るため、マルホランド・ドライヴの曲がりくねった道を車で行くジェイン・パーマー(リザベス・スコット)は、コンヴァティブルを運転中の夫アラン(アーサー・ケネディ)に、パーティに出たくないと言い、先の車の止まっている近くで、無理やり車を止めさせようとする。対向車線から走って来た車から、すれ違いざまに。彼らの車の後部座席に鞄が投げ込まれる。ジェインは夫に中身を改めさせる。中には大量の現金が入っている。停車していた車が彼らの車に近づいてくる。それを見たジェインは自分の運転で家に戻る。車は追ってくるが、ジェインは猛スピードで逃げ切り、途中で夫と運転を代わる。アパートに帰ったジェインは夫にそのカネを自分たちのものにしようと訴えるが、まじめなアランは危険なカネだから警察に届けようと主張する。廊下をはさんだ部屋に住むアランの妹キャシー(クリスティン・ミラー)が彼らを訪ねるが、ジェインは現金の一件を隠す。キャシーが帰った後、アランは渋々、1週間だけカネを保管することに同意する。彼らは車でロサンゼルスのユニオン駅に向かい、アランは荷物預かり所に鞄を預け、預り証を持ち帰る。
数日後、ジェインは夫に内緒で高級毛皮の買い物をし、帰宅する。そこへ私立探偵ダニー・フラー(ダン・ドゥリエイ)と名乗る男が押しかけ、家捜しを始める。ダニーは俺のカネはどこだと脅すが、ジェインは色仕掛けで懐柔しようとする。ジェインはカネは警察に届けたと嘘をつくが、ダニーは新聞に記事が出なかったらまた戻ると言い捨てて去る。やがてジェインが無断で預金を使っていることに気づいたアランが帰ってくる。使った金は鞄の6万ドルの1パーセントだとジェインは言い訳するが、アランは納得しない。怒ったアランはジェインの金持ちの前夫ブランチャードの名を口にする。結局、アランは妻をなだめるため翌日の夜、初のデートと同じ、ウィルシャー大通りのウエストレイク・パーク(1942年に、ダグラス・マッカーサーにちなんでマッカーサー・パークに改称)へボート遊びに行くことを提案する。
翌日、アランの留守中にまたダニーがやって来る。6万ドルの現金を警察に届けたという新聞報道はない。ジェインはカネを折半しようともちかける。いったんダニーが去った後、ジェインはダニーと電話で連絡を取り、9時にウエストレイク・パークの池のほとりの大きなパームツリーの下で落ち合う約束をする。タンスの引き出しから軍隊時代の夫の拳銃を取り出して外出したジェインは夫とボートで池に出る。アランがタバコを探そうとしてジェインのバッグに触れると拳銃が転がり出る。アランを射殺したジェインはパームツリーの下のダニーと10分遅れで落ち合う。ボートに乗り込んだダニーは死体を見て驚くが、ジェインは拳銃で彼を脅し、死体を沈める手伝いをさせる。ダニーはアランの帽子と上着で彼になりすまし、ジェインと共にボートの発着場を通過する。ジェインはアリバイ工作のため、ダニーに車で家まで送らせる。
ダニーと別れ部屋に戻ったジェインはアリバイ工作のためキャシーを呼び出し、アランがドラッグストアに酒を買いに出たまま戻らないと言う。深夜12時近く、ジェインは警察に夫が失踪したと電話する。ジェインは以前からアランは自分を愛していないと打ち明けるが、キャシーは信じない。キャシーが帰った後、外に出たジェインは車を停めたダニーと落ち合う。彼女はダニーを助手席に乗せ、車を運転しながら、彼にカネの出所を聞くが彼は答えない。車はあやうく別の車と衝突しそうになり、ジェインの乱暴な運転に怒ったダニーは車を降りて立ち去る。ジェインは一人、車で海辺に行き、車を乗り捨てる。彼女は拳銃を海に捨てようとするが、近くの道を車が通るので断念する。二人の浮浪者がキーの入った車に乗って逃げる。
翌日、ジェインはダニーの部屋を訪ねる。ダニーは彼女のハンドバッグから拳銃を奪う。ジェインがアランの上着に執着するのに気づいたダニーはその上着のポケットを改めるが出てきたのは真っ白な札一枚だけ。ジェインはショックで卒倒する。一方、兄夫妻の部屋の合鍵を持っているキャシーは、家捜しするうち、タンスの引き出しに兄の拳銃がないことに気づき、拳銃を包んでいた布の下に預り証を見つける。そこへアランの英国駐留時代の元戦友を名乗るドン・ブレイク(ドン・デフォー)が訪れる。車の音を聞いたキャシーは彼を自分の部屋に連れ込み、アランが失踪したことを話す。彼はジェインの前夫が自殺したことをほのめかす。一方、ダニーの部屋で意識を取り戻したジェインは、ダニーに預り証のことを打ち明け、部屋のどこかにあるはずだと言う。ダニーは皮肉を言いつつ、拳銃を彼女に返す。
ジェインの帰宅後、キャシーがやって来て、兄が家出するなら大事にしている軍隊時代の拳銃を持っていくはずだと言うので、ジェインは引き出しの拳銃を見せる。それを見たキャシーは驚き、ジェインへの疑惑を強くする。そこに殺人課の刑事ブリーチ警部補(バリー・ケリー)がやって来る。前夜、ジェインの車にアランとジェインに似た女性が乗っていたという目撃情報があるという。ジェインは夫の浮気相手に心当たりがあると言う。そこに警察から警部補に電話が入り、メキシコ国境近くでジェインの車が発見されたことが分かる。刑事が去った後、キャシーはジェインを疑っていることをほのめかしつつ去る。そこへブレイクが戻ってくる。二人きりでブレイクと話したジェインは彼の素性に疑惑を持ち、彼が帰った直後、アランの戦友ジャック・シャーバーに電話し、ドン・ブレイクという名の人物を知らないことを聞き出すと、翌日の夜7時に家に来るよう頼む。電話中にダニーがやって来る。ジェインは彼に、キャシーが自分を疑い始めたことを告げ、彼女を殺すための毒物を買ってほしいと懇願する。ダニーは毒物は買うが、あとはすべて自分でやれと言い、車で出かける。廊下に隠れていたブレイクはその様子を見守り、手帳にメモをする。その後、ブレイクはキャシーの部屋を訪ね、調査のためと称しアランとジェインの写真を借り出す。ブレイクはキャシーと共にボート発着場に行き、係の男にアランとジェインの写真を見せ、昨晩来たことを確認し、料金を払ったのはジェインだと聞き出す。ブレイクは車でキャシーを送り、恋に落ちた二人は別れる前にキスをする。一方、酔っ払ったダニーがジェインの部屋に戻る。ジェインは毒物を受け取ると、ダニーを追い返す。
翌日、ブレイクがキャシーをディナーに誘いに来る。キャシーは隠してあったユニオン駅の荷物預り証を彼に見せ、ディナーのあとで駅に寄りたいと言う。二人が出かけようとドアを開けると、ジェインが立っている。ジェインは客のシャーバーに会わせたいとブレイクに言う。シャーバーと引き合わされたブレイクは過去についての嘘がばれ、キャシーにも疑われる。キャシーの言葉から、キャシーがブレイクに預り証を渡したことを察したジェインは顔色を変える。シャーバーを追い返したジェインはブレイクに拳銃を向け、彼のポケットを探る。その間にキャシーは自分の部屋に駆け戻り、電話で警察を呼んだ後、ジェインの部屋に戻るが、ドンは床で気絶し、ジェインはいない。キャシーはその場でアダムズ医師を電話で呼んだ後、警察に再び電話し、ユニオン駅に女性が向かうので見張るようにと告げる。
ジェインはユニオン駅に近づくが刑事の張り込みを警戒し、彼女を好色そうなまなざしで見る男に5ドルを渡し、荷物を受け取りに行かせる。荷物を受け取ったジェインはメッセージが挟まれているのに気づき、それを読む。「これを預けた男性は、女性が引き取りにきたら警察に知らせろと言った」とある。
アパートでは医師の手当てによりブレイクが意識を取り戻す。一方、ジェインはダニーの家に行く。怯えたダニーは彼女の拳銃を奪い取る。ジェインは彼に一緒にメキシコに逃げてほしいと頼む。嫌がっていたダニーは現金を見て急に元気になる。ジェインは彼にカネの出所を尋ねる。ダニーによると、橋の不正に関与した大物の保険業者をゆすって得た安全なカネだという。車に鞄を投げ込んだ男はダニーの人相を知らないという。二人は祝杯を挙げるが、酒を一口飲んだダニーはその場に倒れる。ジェインは鞄を持って逃走する。
やがて警察がダニーの死体を発見する。ブレイクも現場に同行している。ブリーチ刑事は自殺と断定するが、ブレイクはジェインが夫を池で殺し、偽装に使ったダニーも殺したのだと自分の推理を述べるが相手にされない。そこに偶然やって来たダニーの女友達が、ダニーが生前5〜6万ドルを巻き上げたが何かまずいことが起きたと言っていたと証言し、自殺の動機が裏付けられる。
メキシコ国境近くの人気のない一本道ででジェインは白いコンヴァティブルを運転している。彼女は車を停め、鞄の現金を後部トランクに移し、鞄を捨てる。無事に国境を越えたジェインは着飾って、高級ホテルにミス・ジェイン・ペトリ名義でチェックインする。その後、彼女はカルロスという色男のメキシコ人と付き合い、贅沢三昧に暮らしている。だが彼女のスイートに突然ブレイクが訪れる。彼はダニーの6万ドルの半分を寄越せと要求する。彼はアランの死体を見つけたが、警察に内緒で池に戻しておいたと彼女をゆする。観念したジェインが隠しておいた札束を見せると、ブレイクは少しの札を抜き取り、死体の引き上げ費用だと言う。ブレイクはロビーに待機する現地警官を電話で呼び出す。彼はこれは復讐だと言い、自分の本名はブランチャードだと明かす。ブランチャードはジェインの前夫の姓だ。ドンは兄のボブが自殺したと信じられず、ジェインが殺害したのではと疑っていたのだ。狂乱状態に陥ったジェインは拳銃を構えるが、後退するうち、バルコニーの手すりを越え、転落死する。ドンはキャシーに「短いハネムーンだな、キャシー。帰国しよう」と言う。
ダン・ドゥリエイはフリッツ・ラング監督の『恐怖省』(1944)の不気味な仕立て屋役の演技でラングに気に入られ、『飾窓の女』(1944)、『緋色の街〜スカーレット・ストリート』(放映題。1945)にも出演することになる。
グレアム・グリーンの同名小説(早川書房刊)に基づくレイ・ミランド主演のヒッチコック風スパイ・ミステリ『恐怖省』のDVDは世界に先駆け、紀伊國屋書店から1月27日に発売される。
デイヴィッド・グーディス(1917−1967)原作(『華麗なる大泥棒』)・脚本、ポール・ウェンドコスの監督デビュー作でダン・ドゥリエイ主演の風変わりなフィルム・ノワール『泥棒』(未。1957)のDVD化も待たれる。
やりすぎの感がある奇抜な編集を手がけたのもウェンドコス。共演は50年代ハリウッドを代表する巨乳女優ジェイン・マンスフィールド、マーサ・ヴィッカーズ。撮影は「第23回」で紹介したように、『街の恐怖』(未。1964)のドン・マルカメス。視覚効果を多用した異色作なのは確かだが、サスペンスを形成する物語構成が甘く、ダン・ドゥリエイ以外の人物造形が薄っぺらだ。またダン・ドゥリエイの葛藤描写も『黒い天使』や『涙は手遅れ』と比べると効果が弱い。訳あり女に扮するマーサ・ヴィッカーズはちょっと魅力的だがやはり描写不測、何よりも悪徳警官の人物像が物足りない。
同じ原作によるアンリ・ヴェルヌイユ監督のフランス映画『華麗なる大泥棒』(1971)の方が日本では知られているだろう。主演はジャン=ポール・ベルモンドとオマー・シャリフ。こちらは痛快冒険活劇だ。
『泥棒』あらすじ (以下、ネタバレあり)
「世界ニュース」の題名。中華民国の総裁、蒋介石の閲兵する軍事パレードの模様、マイアミの女性たちのダンベル運動とポゴ・スティック(日本語商品名ホッピング)でぴょんぴょん飛ぶ模様。続いて、フィラデルフィアの大邸宅ほかの莫大な遺産を相続したシスター・セイラという名の降霊術師(フィービー・マッケイ)の首に掛けた法外な価格のエメラルドのネックレスが映される。ローレル&ハーディの『ユートピア』(未。仏=伊。1950)上映中のフィラデルフィアの映画館で上映しているニュース映画だ。それを見た泥棒のナット・ハービン(ダン・ドゥリエイ)は、窃盗団の一員の若い女グラデン(ジェイン・マンスフィールド)に、セイラの大邸宅を下見させる。ナットとドーマー(ミッキー・ショーネシー)とベイロック(ピーター・カペル)の窃盗団の隠れ家に戻ったグラデンは、ナットに、セイラはニュースキャスター、ジョン・ファセンダ(本人)の夜11時からの15分の番組の熱狂的なファンで一階にあるTVで欠かさず見ており、ネックレスはセイラの二階の寝室の金庫にしまわれていると報告する。
翌日の夜11時、三人の窃盗団はセイラの地所に侵入し、ナットは二階の窓から寝室に入り込む。ナットは金庫の扉の鍵にドリルで穴を開け始めるが、パトカーで巡回中の二人の警官が地所の外に駐車した窃盗団の51年型シボレーに気づき、停車する。見張りのドーマーとベイロックはナットに合図する。いったん外に出たナットは警官たちに近づき、車が故障したと嘘をつき、彼らをやり過ごす。パトカーが去ると、ナットは金庫に戻る。ナットがネックレスを奪った途端、セイラが寝室に戻る。セイラが盗難に気づいた時、窃盗団の車は去り、彼らは無事に隠れ家に戻る。ベイロックはネックレスを8万か8万5千ドルになると値踏みし、すぐに売り払い、山分けしようと言うが、ナットはほとぼりをさますと言う。一方、セイラの邸宅を警察が調べている。警部(ウェンデル・フィリップス)がセイラに質問をする。
翌朝、ナットを尋問した二人の警官は人相書き係の警官に彼の人相を伝える。隠れ家で苛立つドーマーはグラデンに欲情を覚える。警察の完成させた人相書きが各州に送られる。グラデンに苛立つベイロックはナットになぜ彼女を追い出さないのか問い詰める。
ナットは悪夢の中で、遠い昔の孤児院時代を回想する。少年時代のナット(リチャード・エメリー)は、グラデンの父のジェラルドに保護され、ジェラルドが彼の養父となる。ジェラルドは泥棒だが決して銃は使わなかった。彼はナット少年に初仕事をさせる前に、自分に何かあったら、グラデンの面倒を看てくれと頼む。三年後、仕事中のジェラルドはナットのヘマにより射殺される。ナットは目を覚ます。グラデンの身を案じたナットは嫌がるグラデンを説得し、翌朝彼女をアトランティック・シティに静養に行かせることにする。翌朝、ナットはグラデンを駅まで送り、アトランティック・シティ行きの列車に乗せる。彼女をひそかに追う謎の男が現れる。男はアトランティック・シティのビーチで日光浴中の彼女に近づき、彼女と親交を結ぶ。
その後、フィラデルフィアのバーで、落ち込んだナットは官能的な女性デラ(マーサ・ヴィッカーズ)と出会い、彼女のアパートに誘われる。酒を飲んだ後、デラは不幸な生い立ちの身の上話をする。ナットも彼女に生い立ちを打ち明ける。夜遅くデラのアパートで目覚めたナットはデラがいないことに気づき、彼女を探しに行く。庭に出たナットは、グラデンに近づいた謎の男が、デラに、グラデンを人質にし、ネックレスを奪う計画を話すのを立ち聞きする。
グラデンの危機を知ったナットは彼女を守るため、ドーマーとベイロックを率い、夜の道をアトランティック・シティに向け車を飛ばす。車の通過した鉄橋の渡橋料徴収員が人相書きからナットに気づき、警察に通報する。その直後、ナットはある警官に交通違反で停車させられる。警官はいったん去ろうとするが、警察無線でナットに関する報告を聞き、戻ってくる。後部座席のドーマーが警官の顔を撃つ。車は逃走するが、もう一人の警官の射撃によりドーマーも死ぬ。フィラデルフィア警察の警部はナットの逃走経路を推測する。ナットとベイロックはアトランティック・ソティ近くの沼地で車を乗り捨てる。彼らはアトランティック・シティのビーチの荒れ果てた小屋に隠れる。
ナットはそこで待つようベイロックに指示し、グラデンを探しに行く。グラデンはオーシャン・ヴュー・ホテルの部屋で謎の男と抱擁し合っている。そこへホテルのロビーのナットから電話が掛かってきたので彼女は男を帰らせる。このあと、階段の下に降りてきた謎の男の顔が見える。男の正体は、ナットを尋問した警官の片割れチャーリー(スチュアート・ブラドリー)だ。それを知ったナットはグラデンの部屋を訪ね、すぐに逃げようと言う。彼は彼女に、チャーリーは悪徳警官で、同僚に内緒でネックレスを手に入れようとしていることを教える。だがグラデンは同行を拒み、自分のことを女として見てくれないナットをなじる。グラデンの部屋を出る前にナットはネックレスを彼女の枕の下に入れ、彼女に隠れ場所を教え、彼女を待っていると言う。ホテルの前で張っていたチャーリーはナットを尾行する。グラデンはネックレスをオルゴール箱に入れる。ナットたちの隠れ場所を突き止めたチャーリーはフィラデルフィアの共犯者デラに電話し、アトランティック・シティに来るよう指示する。
ナットは桟橋の小型船を見て、それで逃げようと考え、調べに行く。その間にチャーリーは小屋に入り、弱っているベイロックを何度も激しく殴る。ナットが小屋に戻ると、ベイロックは殺され、銃を構えるチャーリーがいる。チャーリーはネックレスを要求する。チャーリーの命令でナットが振り向くと、デラがいる。とうとうナットはネックレスはグラデンの部屋に隠したと白状する。デラにナットを監禁するよう指示した後、チャーリーはネックレスを探しに行く。デラはベイロックの拳銃をナットに向けるが、彼女は撃たないと踏んだナットは小屋を出て、グラデンに電話し警告する。しかしグラデンはビーチにいる、呼び鈴が何度か鳴った後、部屋に戻った彼女が受話器を取る。ナットはスティール・ピア桟橋の遊園地で会おうと言う。グラデンが部屋の外の非常階段に出た途端、銃を構えたチャーリーが入ってくる。彼女が逃げたことを知ったチャーリーは彼女を追う。
遊園地でグラデンと落ち合ったナットは小型船で逃げる計画を話す。彼らがびっくりハウスに入るのを見つけたチャーリーは警備員に警察バッジを見せ、警察への通報を指示すると、びっくりハウスに入る。ナットとグラデスは空中曲芸、高飛び込みの屋外観覧席に座る。チャーリーが彼らの背後から銃を突きつける。2台の白バイに先導されたパトカーがスティール・ピアに急行する。デラも会場の外にいる。ショーが終わり、観客が去ると、ナット、チャーリー、グラデンだけになる。ナットがチャーリーに、ネックレスと引き換えにグラデスを逃がしてくれと申し出ると、チャーリーは同意する。グラデスが先に去り、ナットがチャーリーにネックレスを渡し、去りかけると、チャーリーは彼を背中から撃つ。ナットは出入り口の階段を転げ落ち、グラデンが抱きあげるが即死だ。到着したフィラデルフィア警察の警部がチャーリーによくやったと褒める。チャーリーはナットはネックレスを海に投げ捨てたと言うが、グラデスは「嘘よ」と叫び、そこに現れたデラも彼の言葉を否定する。警部はいきなりチャーリーの顔を殴り、倒れたチャーリーのポケットからネックレスを取り出す。チャーリーは検挙される。
デイヴィッド・グーディスの他の映画化作品には以下がある。
サマセット・モームの小説の脚色に参加した『不実』(未。1947。監督ヴィンセント・シャーマン)、『潜行者』(1947。監督デルマー・デイヴィス)、『行方不明者課』(未。1956。監督ピエール・シュナル、原作『Of Missing Persons』)、『ナイトフォール』(未。1957。監督ジャック・ターナー)、『ピアニストを撃て』(1960。仏。監督フランソワ・トリュフォー)、『狼は天使の匂い』(1972。仏=伊。監督ルネ・クレマン、脚色セバスチャン・ジャプリゾ)、『溝の中の月』(1983。仏=伊。監督ジャン=ジャック・ベネックス)、『野蛮通り』(未。仏。1984。監督ジル・ベア、原作『Street of the Lost』)、『デサント・オ・ザンファー/地獄に堕ちて』(1986。仏。監督フランシス・ジロー、原作『The Wounded and the Slain』)、『ストリート・オブ・ノー・リターン』(1989。仏=ポルトガル。監督サミュエル・フラー)。
ダン・ドゥリエイ主演映画は、他に「第21回」の記事末尾の追加情報に記した『ハマー・フィルム・ノワール第4巻』収録の『36時間』(ビデオ題。1953。監督モンゴメリー・タリー)もある。またダン・ドゥリエイはいえば、アンソニー・マン監督作も忘れることができない。『ウィンチェスター銃'73』(1950)はDVD化されているが、同じくジェイムズ・スチュアート主演の『雷鳴の湾』(1953)のDVD化が待たれる。なおマンが監督するはずだったボーデン・チェイス脚本のジェイムズ・スチュアート西部劇『夜の道』(1957。監督ジェイムズ・ニールソン)にもドゥリエイが出ている。エリック・フォン・ストローハイム主演の『たそがれの恋』(放映題。1945)のDVDは、いくつかのパブリック・ドメイン・ソフトで流通しているが、
アルファからも2006年1月31日に出た。
吉田広明「アンソニー・マン その初期作品紹介 第3回」も参照。
・「第16回」追加情報
リュック・ムレの『密輸業者たち』(未。1966)+『ビリー・ザ・キッドの冒険』(未。1971)のDVDが米ファセッツから2006年12月27日に発売された。1月30日には『ブリジットとブリジット』(未。1966)+『パルパイヨン』(未。1992)のDVDも出る。いずれもフランスのブラック・アウト盤マスターの流用。
・「第5回」「第21回」の追加情報
米フォックスから4月24日に、サミュエル・フラー監督、リチャード・ベイスハート主演の朝鮮戦争映画『折れた銃剣』(放映題。1951)のDVDが発売される。同時発売の戦争映画に、第二次大戦のドイツにおける諜報作戦を扱った『ブルーライト作戦』(1966。監督ウォルター・E・グローマン)、米英両軍間の戦時裏話ものでロバート・ミッチャム主演の英国映画『銃殺指令』(1964。監督ガイ・ハミルトン)、日本未公開ながら国内盤DVDが昨年発売済みの『パープル・ハート』(DVD題。1944)、第二次大戦を舞台にしたジェフリー・ハンター主演の英国映画『独力の』(未。1953。監督ロイ・ボールティング)。
・「第3回」の追加情報
ジャン・ジュネの唯一の監督作『愛の唄』(未。1950)の限定2枚組DVDが2月27日、米
カルト・エピックスから発売される。ジョナス・メカスによるイントロダクション、ケネス・アンガーによる音声解説付き。特典ディスクにはアントワーヌ・ブルセイエ(1930−)によるインタヴュー映像(1981年夏。52分)、ベルトラン・ポワロ=デルペッシュ(1929−2006)による映像インタヴュー(1982年冬。46分)収録。仏語音声、英語字幕付き。
上記の特典映像は、ジュネ没後20年を記念してフランスのフレンドシップ=ファーストから2006年4月に出た『肖像ジャン・ジュネ 愛の唄』という書籍+DVD+2CDのDVDに収録済み。DVDの裏面には、フランスにおけるパレスチナ代表のレイラ・シャヒッド(1949− )映像インタヴュー(2006年3月。21分)、弁護士・政治家のロラン・デュマ(1922− )映像インタヴュー(2005年3月。20分)、IMEC(現代出版研究所)文芸部長でジュネの研究者のアルベール・ディシ(1952− )映像インタヴュー(2005年3月。45分)、1966年頃、ジュネの詩「死刑囚」を歌にしたシャンソン歌手・ギタリスト・作詞作曲家のエレーヌ・マルタン(1928− )映像インタヴュー(2005年9月。33分)収録。180頁の書籍には、詩「死刑囚」のジュネによる手書き原稿、マリーヌ・ジャフレジックによるジュネと映画に関する論考ほか掲載。
最初のインタヴューでは数々の交友関係が語られ、ジャコメッティについての発言もある。次のインタヴューは死後公開を条件とした映像によるジュネの遺言。