紀伊國屋書店からマックス・オフュルスの日本未公開作『魅せられて』(1949)DVDが6月24日発売。TV放映のみの日本未公開作の待望のDVD化だ。
日本でのオフュルス評価はもっぱら『忘れじの面影』(1948)と第二次大戦後のフランス時代の数本のみに偏してきたが、『魅せられて』DVD化が、オフュルス再発見のきっかけとなることを願ってやまない。紀伊國屋書店盤DVDは、仏ワイルド・サイド盤DVDと同一原版だが、ワイルド・サイド盤の初回特別盤は惜しくも廃盤。特別盤には特典として「我らの時代の映画作家」オフュルス編、ミシェル・ミトラニ演出『マックス・オフュルスあるいは撮影の快楽』(未。1965。50分)や『マックス・オフュルスあるいは輪舞』(未。1965。51分)等が付いていた。前者にはマルティーヌ・キャロル、ダニエル・ダリュー、ジャン・ドボンヌ、ジョルジュ・アネンコフ、ヴィットリオ・デ・シーカ、シモーヌ・シモン、アラン・ジェシュア、ピーター・ユスティノフ、クリスチャン・マトラス、アネット・ヴァドマン、マルセル・オフュルス、ジャン・ヴァレールらが出演。
『魅せられて』仏ワイルド・サイド盤DVDレヴュー
イタリアのアラン・ヤング・ピクチャーズからはオフュルス監督の第二次大戦前のフランス映画『明日なき』(未。1939)のDVDが5月24日に発売された。また同社より『魅せられて』DVDは8月23日発売予定。共にイタリア語音声のみ。『明日なき』は、エドウィージュ・フイエール、ジョルジュ・リゴー主演。撮影は名匠オイゲン・シュフタン。フイエールはアベル・ガンス監督の『ルクレツィア・ボルジア』(未。1935)、ジャン・ドラノワ監督の『しのび泣き』(1945)、ジャン・コクトー監督の『双頭の鷲』(1947)などの主演女優。オフュルスの『マイヤーリンクからサラエヴォへ』(特殊上映のみ。1940)にも主演している。日本ではクロード・オータン=ララ監督の『青い麦』(1954)で知られている。
アントナン・アルトーも出ている『ルクレツィア・ボルジア』のDVDは米イメージ・エンターテインメントから出ている。特典にマックス・ランデール主演の短編『助けて!』(未。1923。31分)、『チューブ博士の狂気』(1915。14分)収録。
ジョルジュ・リゴー(ホルヘ・リゴー)は1905年、アルゼンチン、ブエノス・アイレス出身。ルネ・クレール監督の『巴里祭』(1932)のタクシー運転手ジャン役で知られる。オフュルスの『恋愛三昧』(特殊上映題。1934)、『ディヴィーヌ』(未。1935)にも出ている。
昨年の第6回東京フィルメックス特集上映「映画大国スイス 1920's−1940's」で上映されたダグラス・サーク、イグナツィ・ローゼンクランツ監督の仏=スイス合作『アコード・ファイナル』(未。1938)にも主演。40年代以後、アルゼンチン映画に出ていたが、バイロン・ハスキン監督のフィルム・ノワール『暗黒街の復讐』(放映題。1948)などにも出演。50年代後半からスペインのジャンル映画を中心に脇役として活動。
セルジョ・レオーネ監督の『ロード島の要塞』(1961)、クリスチャン=ジャック監督の『黒いチューリップ』(1964)、クロード・シャブロル監督の『スーパータイガー/黄金作戦』(1965)、ドゥッチョ・テッサリ監督の『荒野の大活劇』(1969)、ウンベルト・レンツィ監督の『声なき殺人者』(DVD題。1972)、エウヘニオ・マルティン監督の『ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急"地獄"行き』(DVD題。1973)にも出ている。
イタリア、フラミンゴ・ヴィデオからはオフュルス監督の『快楽』(1952)のDVDが6月13日に発売。こちらはフランス語音声、イタリア語字幕。
オフュルスがイタリアで撮った知る人ぞ知る傑作『みんなの女性』(未。1934)はまだDVDになっていない。原作はサルヴァトーレ・ゴッタ(1887−1980)の同名小説。脚本は『恋愛三昧』のハンス・ヴィルヘルム、クルト・アレクザンダー、オフュルス。主演は『生けるパスカル』(1937)、ロバート・フローリー監督の『帝国ホテル』(未。1939)のイザ・ミランダ(1905−82)。撮影は『トスカ』(1944)、『無防備都市』(1945)ウバルド・アラータ(1895−1947)。
イザ・ミランダはマリオ・ソルダーティ監督の名作『マロンブラ』(映画祭題。1942)にも主演、ルネ・クレマン監督、ジャン・ギャバン主演の『鉄格子の彼方』(1949)、オフュルスの『輪舞』(1950)にも出ている。他の映画出演作には、オムニバス映画『七つの大罪』(1952)のエルヴェ・バザン脚本、エドゥアルド・デ・フィリポ監督『欲ばりと怒り』編と『われら女性』(1953)のルイージ・ザンパ監督『イザ・ミランダ』編があリ、共に国内盤DVDが出ている。その他、『旅情』(1955)のキャサリン・ヘプバーン扮する米国人ジェインが泊まるホテルの女主人役、「第10回」で紹介した『禁じられた抱擁』(1963)のカトリーヌ・スパーク扮するセシリアの母親役を演じている。最後の映画出演作は『愛の嵐』(1974)。
英国セカンド・サイトから9月18日に『マックス・オフュルス・コレクション』DVD−BOXが発売される。 『忘れじの面影』(1948)は映画史家タグ・ギャラガーのヴィデオ・エッセイ付き。『レックレス・モメント/愛と欲望の罠』(放映題。1949)は『エデンより彼方に』(2002)の監督トッド・ヘインズのイントロダクション、『ハリウッド撮影所のマックス・オフュルス』(ラトガーズ大学出版。1996)の著者ルッツ・ベイカーの解説付き。『快楽』(1952)はヘインズのイントロダクション、『快楽の道 Les Chemins du Plasir』ほかの映像特典付き。『たそがれの女心』(1953)はタグ・ギャラガーのヴィデオ・エッセイ、『ショック療法』(1972)の監督アラン・ジェシュアによる『マックス・オフュルスとの仕事 Working with Max Ophuls』付き。
『マックス・オフュルス・コレクション』
ルッツ・ベイカー著
『ハリウッド撮影所のマックス・オフュルス』
いくつかのオフュルス監督作はクライテリオンからLDで発売済みなので、クライテリオンからのオフュルス監督作DVDリリースも待たれる。『忘れじの面影』は、フリッツ・ラング監督の『扉の影の秘密』(DVD題。公開題『扉の蔭の秘密』。1948)、ロバート・ロッセン監督の『ボディ・アンド・ソウル』(ビデオ題。1947)、ロバート・シオドマク(ローベルト・ジオドマク)監督の『暗い鏡』(1946)と共に、アメリカ、パラマウント・ホーム・ヴィデオから5月16日発売予定だったが延期になり、現在発売日未定。
『魅せられて』の主演はバーバラ・ベル・ゲデス(2005年8月8日没)。共演は『ビガー・ザン・ライフ』(DVD題。1956)のジェイムズ・メイソンと『最前線』(1957)のロバート・ライアン。ここで、まもなく1回忌を迎えるベル・ゲデス主演の主なDVDを紹介しておこう。
デビュー作のフィルム・ノワール『朝はまだ来ない』(放映題。1947)は、米キノからDVDが出ている。マルセル・カルネ監督、ジャン・ギャヴァン主演の『陽は昇る』(ビデオ題。1939)のリメイク。製作はアキム兄弟。監督はアナトール・リトヴァク。
『大いなる幻影』(1937)、オフュルス監督の『ヴェルター』(未。1938)、『獣人』(1938)、『獣人』(1938)、『ゲームの規則』(1939)、『ライムライト』(1952)『ショック集団』(1963)、『裸のキッス』(1964)などの美術を担当し、『原子怪獣現わる』(1953)、『怪獣ゴルゴ』(1959)を監督したウクライナ、ハリコフ出身のウジェーヌ・ルリエ(ユージーン・ルーリー)(1903−91)の著書『映画における私の仕事 My Work in Films』(1985。HBJ)によると、『獣人』などのフランス映画で成功を収めた映画製作者のロベール&レーモン・アキム兄弟がRKO社でアメリカ映画を製作するにあたり、まず企画されたのがジャン・ルノワール監督による二度目の『ボヴァリー夫人』だったという。ルノワールはガリマール書店の製作で1933年に一度『ボヴァリー夫人』を映画化している(紀伊國屋書店からDVDが出ている)。1946年にルノワールとルリエはRKO社の『ボヴァリー夫人』の準備を行ったが、ルノワールはこの企画に興味をなくしてしまった。それに代わりアキム兄弟が企画したのが『朝はまだ来ない』(原題『長い夜』)だった。主演はヘンリー・フォンダ。共演はヴィンセント・プライス。イライシャ・クック・ジュニア、チャールズ・マッグロウといったフィルム・ノワール・ファン好みの脇役も出ている。脚本は『死刑執行人もまた死す』(1943)のジョン・ウェクスリー。撮影は『外套と短剣』(1946)のソル・ポリト。
『朝はまだ来ない』米キノ・ヴィデオ盤DVD
バーバラ・ベル・ゲデスの出演第二作にあたる『ママの想い出』(1948)は日本ではジュネス企画から非正規版DVD(特典なし)が出ているが、米20世紀フォックスからは正規版DVDが出ているので日本盤発売の可能性あり。監督はジョージ・スティーヴンス。共演はアイリーン・ダン。撮影は『過去を逃れて』(DVD題。1947)のニコラス・ムスラカ。
『ママの想い出』米フォックス盤
DVDレヴュー
ロバート・ワイズ(2005年9月14日没)監督、ロバート・ミッチャム主演のノワール西部劇『月下の銃声』(1948)は仏エディシオン・モンパルナスとスペイン、マンガ・フィルムスからDVDが出ている。撮影は『ママの想い出』と同じニコラス・ムスラカ。
エディシオン・モンパルナス
『月下の銃声』仏エディシオン・モンパルナス盤
DVDレヴュー
マンガ・フィルムス
エリア・カザン監督、リチャード・ウィドマーク主演のフィルム・ノワール『暗黒の恐怖』(1950)は米20世紀フォックスのフィルム・ノワール・シリーズでDVD化されている。撮影は『荒野の決闘』(1946)、『情無用の街』(1948)、『拾った女』(1953)、『ビガー・ザン・ライフ』(1956)のジョー・マクドナルド。
『暗黒の恐怖』米フォックス盤
DVDレヴュー
ヒッチコックの『めまい』(1958)では、ベル・ゲデスは、ジェイムズ・スチュワート扮する元刑事スコティの女友達ミッジの役。『めまい』は世界各国でさまざまなDVDが出ている。
ダニー・ケイ主演のヒット作『五つの銅貨』(1959)はディキシーランド・ジャズのコルネット奏者レッド・ニコルズ(1905−65)の伝記映画。ベル・ゲデスはニコルズの妻の役。ただし歌はアイリーン・ウィルソンの吹替え。サントラ盤CD(UCCC-3033)はユニバーサル・ミュージックから2004年発売。アイリーン・ウィルソンは、『自信売ります』(放映題。1947)、『ヴィナスの接吻』(1948)、『賄賂』(1949)ではエヴァ・ガードナーの歌の吹替え、『ワーズ&ミュージック』(放映題。1949)ではシド・シャリッスの歌の吹替えを担当している。『五つの銅貨』は米パラマウント社からDVDが出ている。撮影は『黄金の耳飾り』、『ウエスト・サイド物語』(1961)、『大脱走』(1963)のダニエル・ファップ。
『五つの銅貨』
米パラマウント盤DVD /
レヴュー
『魅せられて』の撮影監督は『モロッコ』(1930)、『間諜X27』(1931)、『上海特急』(1932)のスタンバーグ=ディートリヒ作品で知られるリー・ガームズである。
ここでガームズとゆかりの深いディートリヒ作品のDVDを紹介しておく。マルレーネ・ディートリヒ・コレクション仏ユニヴァーサル盤DVD(英語字幕付き)は13タイトル発売。『モロッコ』、『間諜X27』、『ブロンド・ヴィナス』(1932。監督スタンバーグ)、『上海特急』、『恋の凱歌』(1933。監督ルーベン・マムーリアン)、『恋のページェント』(1934。監督スタンバーグ)、『スペイン狂想曲』(1934。監督スタンバーグ)、『妖花』(1940。監督テイ・ガーネット)、『焔の女』(1941。監督ルネ・クレール)『男性都市』(1942。監督ルイス・セイラー)、『スポイラース』(1942。レイ・エンライト監督)、『黄金の耳飾り』(放映題。1947)、『異国の出来事』(放映題。1948。ビリー・ワイルダー監督)。
『間諜X27』仏ユニヴァーサル盤
DVDレヴュー
『スペイン狂想曲』仏ユニヴァーサル盤
DVDレヴュー
『焔の女』(1941)仏ユニヴァーサル盤
DVDレヴュー
『マルレーネ・ディートリヒ:グラマー・コレクション』フランチャイズ・コレクション米盤DVD
『モロッコ』
『ブロンド・ヴィナス』
『スペイン狂想曲』
『焔の女』
『黄金の耳飾り』収録
その他のスタンバーグ=ディートリッヒ作品の主なDVD
『嘆きの天使』(1930。英語版、ドイツ語版2ヴァージョン収録) /
米キノ・ヴィデオ盤DVDと独BMGヴィデオ盤DVDの比較
『恋のページェント』米クライテリオン盤
DVDレヴュー
ガームズは『風と共に去りぬ』(1939)の撮影にも参加しているがクレジットはない。 ガームズがベン・ヘクトと共同監督した『紐育(ニューヨーク)の天使』(1940)はソニー・ピクチャーズからDVDが出ているが目下廃盤。
『紐育の天使』米ソニー盤
DVDレヴュー
ガームズが製作した、A・エドワード・サザーランド監督の『明日以降』(未。1940)はパブリック・ドメイン作品のため数社からDVDが出ている。別題『クリスマス以降』。身寄りのない裕福な老人3人が、ふとしたことから、クリスマス・イヴのディナーに、見知らぬカウボーイ気取りの青年(リチャード・カールソン)と若い女性(ジーン・パーカー)を招くことになる。若い2人は恋に落ちる。3人の老人は飛行機事故で死ぬが、幽霊となった彼らは若者たちの恋の成就を助けるためアパートに戻ってくる。3人の老人に扮するのは『トレイダ・ホーン』(1931)のハリー・ケリー、『小公子』(1936)のC・オーブリー・スミス、『砂塵』(1939)のチャールズ・ウィニンガー。彼らの召使のロシア移民をウクライナ出身のコメディアン、アレックス・メレシュとモスクワ芸術座出身で米国の左翼演劇に多大な影響を与えた、『邂逅(めぐりあい)』(1939)のマリア・ウスペンスカヤが演じる。
リー・ガームズが撮影監督についた有名なフィルム・ノワール『悪夢の路地』(未。1947)は昨年、米フォックス社のDVD化に続き、昨年、英ユリイカでもDVD化された。闇を際立たせる照明設計はきわめて異色。英盤にはフィルム・ノワール研究者として名高いアラン・シルヴァーとジェイムズ・アーシニの音声解説その他の特典付き。
『悪夢の路地』英ユリイカ盤DVD リー・ガームズについて(1978年3月2日のジェイムズ・エイガーによるガームズのインタヴューが聞ける)
『魅せられて』の脚本は、『ロープ』(1948)のアーサー・ローレンツ。ブロードウェイ・ミュージカル版の『ウエスト・サイド物語』(1957年初演)の脚本で知られる。同作の出発点は1949年、ジェローム・ロビンズがレナード・バーンスタインに、『ロミオとジュリエット』をカトリック教徒とユダヤ教徒の対立に置き換えて、ロウアー・イースト・サイドを舞台に現代版に翻案するミュージカルのアイデアを話したことだった。台本はローレンツに委ねられたが、この設定は古すぎた。そのうち、マンハッタンのウエスト・サイドにおけるヒスパニック系の若いギャングの事件が頻発するようになり、機は熟した。作詞はスティーヴン・ソンドハイムに委ねられた。演出・振付ロビンズ、台本ローレンツの『ジプシー』(1959初演)も作詞はソンドハイム。ローレンツ自身は『ジプシー』および『ウエスト・サイド物語』の映画版は気に入っていないという。
ジェローム・ロビンズについては、津野海太郎「ジェローム・ロビンスが死んだ」が
『月刊百科』(平凡社)に連載中。
アマンダ・ヴァイル著
『Somewhere:A Life of Jerome Robbins』(Broadway Books)は今秋刊行予定。
スティーヴン・ソンドハイムに関する
日本語サイト
レナード・バーンスタイン公式HP
ローレンツは2000年に発表した自伝
『Original Story By 』で自らがゲイであり、『夜の人々』(1948)、『見知らぬ乗客』(1951)、『夏の嵐』(1954)のファーリー・グレインジャーや1955年から同棲しているTV俳優トム・ハッチャーとの関係を告白している。
2004年には
『アーサー・ローレンツ戯曲選』(Plays of Arthur Laurents" in 2004.)が刊行された。
ローレンツは、赤狩りを扱った『追憶』(1973)の原作・脚本でも知られる。もっともローレンツは映画版『追憶』の出来に不満があった。主演のバーブラ・ストライザンドも映画の出来が不満だった。その間の事情は『追憶』コレクターズ・エディションDVD特典のマイケル・アリック監督によるメイキング・ドキュメンタリー『Looking Back』(1999。70分)に詳しい。マイケル・アリックは『ウエスト・サイド物語』スペシャル・エディションDVDのボーナス・ディスク収録『ウエスト・サイド・メモリーズ』(2003。55分)も監督。他にフォックスの『偉大な生涯の物語』特別編の映像特典『メイキング・オブ《偉大な生涯の物語》』(2001。41分)、ソニー・ピクチャーズの『クレイマー、クレイマー』コレクターズ・エディション収録のメイキング『Finding the Truth』(2000。49分)、『L.A.大捜査線/狼たちの街』スペシャル・エディションDVD(日本未発売)特典の『Counterfeit World』(2003。30分)、『続・夕陽のガンマン』アルティメット・コレクションのボーナス・ディスク収録『レオーネの西部劇』(2004。20分)、『レオーネの作風』(2004。24分)、『モリコーネの音楽と《続・夕陽のガンマン》』(2004。8分)なども製作・監督。『荒野の七人』アルティメット・コレクションのボーナス・ディスク収録、ルイ・ヒートン監督の『メイキング・オブ《荒野の七人》』(2000年。47分)を製作。
『追憶』コレクターズ・エディションDVD /
米盤DVDレヴュー
『ウエスト・サイド物語』デラックス・コレクターズ・エディションDVD(期間限定生産)はソニー・ピクチャーズから7月26日発売。『続・夕陽のガンマン』アルティメット・コレクション、『荒野の七人』アルティメット・コレクションはソニー・ピクチャーズから8月23日発売。
オフュルスの『魅せられて』(1949)は短命に終わったエンタープライズ・プロ(1947−49)の最後の製作作品となった。エンタープライズ・プロは、とりわけジョン・ガーフィールド主演の傑作フィルム・ノワール『ボディ・アンド・ソウル』および『苦い報酬』(ビデオ題。1948)を製作したことにより、映画史上、重要な役割を果たした。共にブラックリスト脚本家のエイブラハム・ポロンスキー(ディートリヒの『黄金の耳飾り』の脚本にも参加)が脚本を書き、前者はロバート・ロッセン、後者はポロンスキー自らが監督した。前者のジェイムズ・ウォン・ハウ、後者のジョージ・バーンズの撮影も秀逸である。
前者はマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロがボクシング映画『レイジング・ブル』(1980)を撮る時、参照したことでも知られる。後者はギャング映画『グッドフェローズ』(1990)に影響を与えている。この2本が公開から半世紀以上を経た今日もなお日本未公開であるのは嘆かわしい。近年、ジュネス企画から日本語版VHSが発売されたが、ほとんど観られていないだろう。ジョン・ガーフィールドについては、ワーナー・ホーム・ビデオから発売されている『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1946年版)DVD特典のデーヴィッド・ヒーリー監督の『ジョン・ガーフィールド物語』(2003。58分)を参照。ナレーターはジョンの娘のジュリー・ガーフィールド。
デイヴィッド・ヒーリー監督のドキュメンタリー『ジュディ・ガーランド:コンサート・イヤーズ』(1985。放映版は80分。DVDは85分)は2002年に米ホワイト・スター・ヴィデオでDVD化された。ナレーターはジュディの娘ローナ・ラフト。トニー・ベネット、ライザ・ミネリ、リナ・ホーン、バーブラ・ストライサンドとジュディのデュエット映像も含まれる。
ジュディの記録映像を集めた『ジュディ・ガーランド・コレクション』DVD−BOX(4枚組)にも収録。
ホワイト・スター・ヴィデオ
同監督の『スペンサー・トレイシ・レガシー:キャサリン・ヘプバーンによるトリビュート』(1986。87分)は米ワーナーから2004年に出た『ヘプバーン&トレイシー・シグネチャー・コレクション』DVD−BOX(4枚組)のボーナス・ディスクに収録。
『ヘプバーン&トレイシー・シグネチャー・コレクション』
同監督の『Bacall on Bogart』(1988。83分)はワーナーの『カサブランカ』スペシャル・エディションDVD(2枚組)の特典になっている。日本盤の『カサブランカ特別版』(1枚もの)には未収録なので要注意。同監督の『キャサリン・ヘプバーン:セルフ・ポートレート』(1993。70分)は、『フィラデルフィア物語』スペシャル・エディション(2枚組)のボーナス・ディスクに収録。同監督の『アドベンチャー・オブ・エロール・フリン』(2005。86分)は、ワーナーの『エロール・フリン・シグネチャー・コレクション』DVD−BOX(6枚組)のボーナス・ディスクに収録。
『アドベンチャー・オブ・エロール・フリン』
DVDレヴュー(英語)
『ボディ・アンド・ソウル』のDVDは米国リパブリック・アーティザン盤、フランス、ワイルド・サイド盤が出ている。後者は4%のPALスピードアップ、またフランス語字幕はOffにできない。前述のように、米パラマウント社からも発売予定があったが延期され、発売日未定。『苦い報酬』は米ライオンズ・ゲイト盤とフランス、ワイルド・サイド盤が出ている。今年の1月に英国セカンド・サイトからも『ボディ・アンド・ソウル』と『苦い報酬』のDVDが出た。こちらも4%のPALスピードアップ。また冒頭で紹介したイタリアのアラン・ヤング・ピクチャーズからも6月7日に『苦い報酬』のDVDが出た。イタリア語音声のみ。
ポロンスキーについては、上島春彦『レッドパージ・ハリウッド』(作品社)を参照。
またポール・ブーレ、デイヴ・ワグナー著
『非常に危険な市民:エイブラハム・リンカン・ポロンスキーとハリウッド左翼』(カルフォニア大学出版、2001)も参照。
1999年2月24日の
ポロンスキー・インターヴュー
『ボディ・アンド・ソウル』DVD、
アーティザン盤とワイルド・サイド盤の比較
『苦い報酬』DVD、
ライオンズ・ゲイト盤とワイルド・サイド盤の比較
『苦い報酬』
ライオンズ・ゲイト盤DVDレヴュー
ポロンスキー脚本のこの2本のフィルム・ノワールにはロバート・オルドリッチが助監督についている。オルドリッチは『魅せられて』の製作にも関わった。
紀伊國屋書店の『フィルム・ノワール傑作選』DVD−BOX収録『キッスで殺せ』(1955)封入リーフレットのオルドリッチの経歴中にも『魅せられて』に関する言及があるが、記述に間違いがある。この場を借り、お詫びと共に訂正しておく。オルドリッチは『魅せられて』では助監督と製作管理を兼任し、オフュルスが病気のため、製作の都合で友人のジョン・ベリーに監督を頼んだ。7月半ばからベリーが女優のみの場面を演出するが、7月末にオルドリッチは不本意ながらベリーを解雇し、オフュルスが復帰した。だがベリー演出箇所が他の箇所とミスマッチだったため、オフュルスは10月頭に追加撮影を行った。完成版に残るベリー演出 箇所は「魅力開発学校」のシークエンスのみである。詳細は、『魅せられて』DVD封入リーフレット掲載の映画史家・小松弘による論考「『魅せられて』はいかに製作されたか」を参照。同リーフレットには、これまで日本語で読むことのできなかったオフュルスの略歴も掲載されている。
・「第2回」の補足情報
スペイン、マンガ・フィルムからリチャード・フライシャー監督の長編第一作『親の離婚した子供』(未。1946)および、ローレンス・ティアニー、プリシラ・レイン主演の未公開フィルム・ノワール『ボディガード』(1948)と日本ではビデオしか出ていなかった『札束無情』(ビデオ題。1950)のDVDが7月5日に発売。『札束無情』の主演は『その女を殺せ』(ビデオ題。1952)のチャールズ・マッグロウ。
こうなると、エンタープライズ・プロとスタンリー・クレイマー製作、ロバート・オルドリッチが助監督についた『ムコ捜し大騒動』(放映題。1948)のDVD化も期待される。
マンガ・フィルムス
『親の離婚した子供』
『ボディガード』
『札束無情』(全てマンガ版DVD)
また一度廃盤になっていた『マンディンゴ』(1975)も7月19日に
スペイン、ユニヴァーサル社から発売。こちらはスウェーデンでは4月24日、デンマークでは5月1日に発売済み。